大人語を話さず暮れる一日はその日かぎりの小さな絵本
(高槻市 有田里絵)
迷宮のごとく機能をたたみ込み携帯電話ただ百グラム
(京都市 才野 洋)
シーサーの開いた口に育つ雛 海あおあおと沖縄の春
(福山市 武 暁)
************************
一首目。子育て真っ最中の歌。大人語というのは、聞かない言葉だが、幼児語じゃない普通の話し言葉とすぐにわかる。一日中、幼児ことばで話して過ごす日は、まるで絵本のようだ。しかしそんな状態がいつまでも続くわけはないことを、作者も気付いて楽しんでいる。絵本という把握が面白い。
二首目。私は携帯電話を持たないのだが、さまざまな機能があるらしく、バスの中でもどこでも、みな夢中になって携帯電話と向き合っている。そんなにたくさんの機能があるのに、重さはたった百グラムという驚きが一首になった。「たたみ込み」が画面の平面や携帯電話の形と合って、巧い表現だと思う。
三首目。沖縄の大らかな土地柄を感じさせる歌。まだ一度も沖縄に行ったことがないのだが、ぜひ行きたくなってしまった。
前登志夫氏が亡くなられた。
先日、「山中智恵子を語る会」で、お話をされる予定だったが、ご病気のため急遽前川佐重郎さんがピンチヒッターとして講演をなさった。
前登志夫氏の歌集は、以前2冊ほど読んだ記憶があるが、一度もお顔を見ることも、お話しを聞くことも出来なかった。残念である。
アンソロジーでも読み返してみようと思う。ご冥福をお祈りいたします。
その忌日同じうなりぬ花の季(とき)前登志夫、チャールトン・ヘストン忘れじ
(近藤かすみ)
(高槻市 有田里絵)
迷宮のごとく機能をたたみ込み携帯電話ただ百グラム
(京都市 才野 洋)
シーサーの開いた口に育つ雛 海あおあおと沖縄の春
(福山市 武 暁)
************************
一首目。子育て真っ最中の歌。大人語というのは、聞かない言葉だが、幼児語じゃない普通の話し言葉とすぐにわかる。一日中、幼児ことばで話して過ごす日は、まるで絵本のようだ。しかしそんな状態がいつまでも続くわけはないことを、作者も気付いて楽しんでいる。絵本という把握が面白い。
二首目。私は携帯電話を持たないのだが、さまざまな機能があるらしく、バスの中でもどこでも、みな夢中になって携帯電話と向き合っている。そんなにたくさんの機能があるのに、重さはたった百グラムという驚きが一首になった。「たたみ込み」が画面の平面や携帯電話の形と合って、巧い表現だと思う。
三首目。沖縄の大らかな土地柄を感じさせる歌。まだ一度も沖縄に行ったことがないのだが、ぜひ行きたくなってしまった。
前登志夫氏が亡くなられた。
先日、「山中智恵子を語る会」で、お話をされる予定だったが、ご病気のため急遽前川佐重郎さんがピンチヒッターとして講演をなさった。
前登志夫氏の歌集は、以前2冊ほど読んだ記憶があるが、一度もお顔を見ることも、お話しを聞くことも出来なかった。残念である。
アンソロジーでも読み返してみようと思う。ご冥福をお祈りいたします。
その忌日同じうなりぬ花の季(とき)前登志夫、チャールトン・ヘストン忘れじ
(近藤かすみ)
前登志夫→吉野→桜という連想がまず起こります。
自然の中でずっと暮らすということは、当たり前だけれど、人生に大きな意味があるのでしょうね。私は町の暮らししか知らないので、なにか遠いところのように思われます。前登志夫の短歌もじっくり読まなければなりませんが、何か遠い存在です。
桜にはまだ蕊が残っていますが、当地ではもうツツジが咲き始めました。去年よりも十日以上早いように思われます。
前登志夫氏は散文の達人でもありましたね。私には、淀みのないその文章がとても印象的でした。ご逝去が残念。
朝日新聞に前登志夫さんのエッセイが連載されていて、たのしみに読んでいました。
亡くなられたというより、吉野の山に還られたというか、自然と一体になられたように感じます。