気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2008-04-07 20:17:25 | 朝日歌壇
大人語を話さず暮れる一日はその日かぎりの小さな絵本
(高槻市 有田里絵)

迷宮のごとく機能をたたみ込み携帯電話ただ百グラム
(京都市 才野 洋)

シーサーの開いた口に育つ雛 海あおあおと沖縄の春
(福山市 武 暁)

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一首目。子育て真っ最中の歌。大人語というのは、聞かない言葉だが、幼児語じゃない普通の話し言葉とすぐにわかる。一日中、幼児ことばで話して過ごす日は、まるで絵本のようだ。しかしそんな状態がいつまでも続くわけはないことを、作者も気付いて楽しんでいる。絵本という把握が面白い。
二首目。私は携帯電話を持たないのだが、さまざまな機能があるらしく、バスの中でもどこでも、みな夢中になって携帯電話と向き合っている。そんなにたくさんの機能があるのに、重さはたった百グラムという驚きが一首になった。「たたみ込み」が画面の平面や携帯電話の形と合って、巧い表現だと思う。
三首目。沖縄の大らかな土地柄を感じさせる歌。まだ一度も沖縄に行ったことがないのだが、ぜひ行きたくなってしまった。

前登志夫氏が亡くなられた。
先日、「山中智恵子を語る会」で、お話をされる予定だったが、ご病気のため急遽前川佐重郎さんがピンチヒッターとして講演をなさった。
前登志夫氏の歌集は、以前2冊ほど読んだ記憶があるが、一度もお顔を見ることも、お話しを聞くことも出来なかった。残念である。
アンソロジーでも読み返してみようと思う。ご冥福をお祈りいたします。

その忌日同じうなりぬ花の季(とき)前登志夫、チャールトン・ヘストン忘れじ
(近藤かすみ)


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4 コメント

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Unknown (tamaya)
2008-04-09 04:35:48
前登志夫さん、訃報に接した時は「ああ・・・」と思うばかりで季節のことなどを考える余裕がありませんでしたが、ちょうど吉野の桜の頃でしたね。病院ではなくご自宅でなくなられたとのこと、そして桜の季節に逝かれたこと。それが前さんの遺された最後のメッセージのように思えます。
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Unknown (かすみ)
2008-04-09 10:25:51
tamayaさん おはようございます。
前登志夫→吉野→桜という連想がまず起こります。
自然の中でずっと暮らすということは、当たり前だけれど、人生に大きな意味があるのでしょうね。私は町の暮らししか知らないので、なにか遠いところのように思われます。前登志夫の短歌もじっくり読まなければなりませんが、何か遠い存在です。
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Unknown (あらつ)
2008-04-15 22:54:51
こんばんは
 桜にはまだ蕊が残っていますが、当地ではもうツツジが咲き始めました。去年よりも十日以上早いように思われます。
 前登志夫氏は散文の達人でもありましたね。私には、淀みのないその文章がとても印象的でした。ご逝去が残念。
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Unknown (かすみ)
2008-04-15 23:57:09
あらつさん こんばんは。
朝日新聞に前登志夫さんのエッセイが連載されていて、たのしみに読んでいました。
亡くなられたというより、吉野の山に還られたというか、自然と一体になられたように感じます。
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