気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

天地眼  蒔田さくら子  つづき 

2021-08-17 23:59:34 | つれづれ
産む力われは知らねば畏れきく真夜冷蔵庫が氷生む音

さ緑のとき過ぎ夏の深緑佳きかなかなと鳴くやひぐらし

笑つてゐる場合でなきゆゑ笑ひをりこれがいつもの我の超え方

ケータイを嫌ひしわれがメール打つ変節、豹変老いては愉悦

光には影の添ふこと影に身を置く安らぎもありと知りたり

不動明王右目は天を左目は地を睨(ね)めたまひ天地眼とぞ

ああつひに木枯しきたかと落とすもの落としつくしし樹あれば畏る

とろとろと弱火にあやされ黒大豆ゆめうつつにてふくらみをらむ

はかなきまで小さけれども木に騒(そめ)く夕雀みな年越すいのち

(蒔田さくら子 天地眼 短歌研究社)

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この前の日曜日、短歌人会の新年歌会に参加して蒔田さんにお会いできた。このブログのこともご存じとのこと。うれしかった。

三首目に表現された芯の強さは見習いたいところ。以前、居酒屋で隣りに坐ったとき、膝に飲み物がこぼれてしまったが、ものともせず乾杯のあいさつをされた。
四首目。ケータイ電話にも慣れて使いこなすという頼もしさ。
六首目は、京都の青蓮院を訪ねたとき、青不動像の軸を見ての歌。あとがきには「歌い継ぐということだけは為遂げてきたと、初めて穏やかな充足感に浸れたのでした」と描いておられる。わたしも時間を見つけて、青蓮院を訪ねてみたくなった。
結社に所属して歌を作るということは、先輩の思いを受け継いでいくということだと、改めて思う。


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