気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

花の渦 齋藤芳生 現代短歌社

2019-11-28 23:06:31 | つれづれ
林檎の花透けるひかりにすはだかのこころさらしてみちのくは泣く

怒らせたのはきっとわたくし秋草のなかの飛蝗はおとたてて跳ぶ

ひとを恋う髪すすがんとする水のするどくてはつか雪のにおいす

うつくしき扇ひらきて持つのみのそれのみの手よ古りし雛の

山桜の花をはさんだのはあなた藍深き広辞苑のなかほど

もう痛くはないがあまたの傷をもつ舟として青葉若葉をくぐる

「フクシマの桃をあなたは食べますか」問いしひとを憎まねど忘れず

先に帰れと言われても兄を待っている弟は兄と同じ瞳をして

大きな花束(グランブーケ)を落ちこぼれたる花として暮れゆく丸の内を仰ぎぬ

授業へ向かうわたしと歌をよむわたし青葉の交差点に見交わす

(齋藤芳生 花の渦 現代短歌社)

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