気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

淡き日輪 五十嵐敏夫 

2011-08-10 22:21:00 | つれづれ
六本木ヒルズはなけれど青空に雪をいただく月山があり

書を捨てて町に出でよと誰そ言ひしわれは朗らに畑に出でゆく

雪囲ひ君が先立ち庭に出でわれに指図すこの家の慣(なら)ひ

新年歌会に禿頭三人並みをれば山形ですねと笑みかける人 神田学士会館

その名ゆゑ引かず残しし母子草葱の畝間に花ゆらしゐる

極みなく雪の舞ひくる天空に淡き日輪かたぶきてゆく

残る生(よ)を土と短歌に親しみて汗かき恥かき生きむと思ふ

洗濯機の操作も分からず君に問ひ下着十枚やうやう洗ふ

リヤカーに父は大豆を曳きゆきて入学祝に靴購ひくれき

雪が降ることの稀なるこの冬はヤクルトをばさんニコニコと来る

(五十嵐敏夫 淡き日輪 六花書林)

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短歌人の五十嵐敏夫さんの第一歌集『淡き日輪』を読む。
新年歌会や全国集会でお目にかかったかもしれないが、今年の夏の全国集会には来ておられなかった。
傘寿の記念に上梓されたとのこと、実直な人生を歩んでこられた軌跡が窺われる。わからない歌はなく、すべてすんなりと読める。これはとても大事なことだと思う。
しっかり者で家事の得意な奥様を大事にされている様子がよくわかり、羨ましい。
短歌を作る人には、個性が強すぎて付き合いにくいタイプの人もいるが、五十嵐さんはきっとやさしい小父さんのような気がする。



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