気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

石の記憶  阪本博子

2008-12-03 02:19:14 | つれづれ
何処より来りていづこへ行くわれか石の記憶に問ひたきものを

後の世は人に生れ来よかたはらの眠れる犬に言ひ聞かす夜

逢ひたくば鏡を見よと人は言ふ父に似し娘の心を知らず

良き富士を撮らせたまへと登山前 太宰治の碑にわが触れぬ

声高にひとら集へる家の前 遠回りするわが鬱心

たらたらと家事終へられぬわれのため魔女と出でこよ箒かかげて

しあはせのしるしたとへば庭隅にひとつ明るむ侘助の白

(阪本博子 石の記憶 短歌新聞社)

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先月、奈良へ行ったとき、たまたま一緒にお茶を飲むことになった阪本博子さんに歌集を貸していただいた。結社は作風に所属しておられる。
カメラが趣味で富士山を撮ることをライフワークとされているご夫君と愛犬を詠んだ歌が多く、そこに彼女の思いを読み取ることが出来た。歌集の表紙をはじめ、数枚挿入された写真は、彼女の作品やご夫君の作品である。暖かく理解のあるご家族に恵まれて、短歌をはじめ、絵画やピアノを楽しまれている様子が伝わってきた。それでも鬱という言葉に何回か出会い、どんな環境で暮らしていても、ひとそれぞれの悩みはあるのだろうと感じた。


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