耳内に壊れたラジオ一つあり少女の頃より夕ぐれに鳴る
お隣りの改装工事はじまりて怒り出したり聞こえるひとは
唇を読めずにわれは立ちつくす補聴器センターみなマスクなり
うず高く積りし落葉舞い上り空の家族が呼ぶ声がする
亡き母が少女となりて吾(あ)とふたりお遍路に行く春の夜の夢
空にいる笑顔の父母に会いに行く雲にかかった虹を登りて
向かい合う鏡のように知っているアサミのなかの少女のわたし
少しずつ物を減らして春の夜に行方くらます我の退職
大いなる宇宙(そら)とつながり踊る時プルメリアの花闇にゆれおり
もう足は動かないけど指はあるハンドフラでも舞台に立てば
(和田守玖子 空の家族 現代短歌社)
*****************************
見知らぬ方から送られてきた歌集。2020年11月作歌開始とのことで驚いた。短期間にたくさんの歌を作った。質も高い。楠誓英さんのアドバイスもあり、立派な一冊となった。表紙の絵も自作。七十七歳でもこんなことができたのかと感心する。内容をみると、難聴があり、病があり、辛い思いをなさってきた。学校に勤務中の、生きづらい生徒への目がやさしい。頑張り屋さんという言葉を思う。境遇に負けない生き方に感心し見習いたいと思う。
お隣りの改装工事はじまりて怒り出したり聞こえるひとは
唇を読めずにわれは立ちつくす補聴器センターみなマスクなり
うず高く積りし落葉舞い上り空の家族が呼ぶ声がする
亡き母が少女となりて吾(あ)とふたりお遍路に行く春の夜の夢
空にいる笑顔の父母に会いに行く雲にかかった虹を登りて
向かい合う鏡のように知っているアサミのなかの少女のわたし
少しずつ物を減らして春の夜に行方くらます我の退職
大いなる宇宙(そら)とつながり踊る時プルメリアの花闇にゆれおり
もう足は動かないけど指はあるハンドフラでも舞台に立てば
(和田守玖子 空の家族 現代短歌社)
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見知らぬ方から送られてきた歌集。2020年11月作歌開始とのことで驚いた。短期間にたくさんの歌を作った。質も高い。楠誓英さんのアドバイスもあり、立派な一冊となった。表紙の絵も自作。七十七歳でもこんなことができたのかと感心する。内容をみると、難聴があり、病があり、辛い思いをなさってきた。学校に勤務中の、生きづらい生徒への目がやさしい。頑張り屋さんという言葉を思う。境遇に負けない生き方に感心し見習いたいと思う。