千本のバラの花よりひなげしの小さな花束下さいあなた
独り言吐きたる夕べ俎板に耳たぶほどの百合根散らばる
足早に交差点渡る人の波春宵一人ああをばさんもゆく
濃みどりの銭苔生ふる湿地ゆけば中年期なる体にほへり
嘘すこし交へて書ける近況の最後の句点ためらひて打つ
ベランダに干せばくるくる揺れてゐる子の婚の日に履きし白足袋
新京極スター食堂のA定食母に連れられ食みし幼日
新ジャガの煮物ほこほこつるりんこ夫とふたりの夕餉の楽し
ああこれがわが後ろ姿 のそのそとビデオ画面に老人が行く
喜望峰にいつか立ちたし嵐吹く岬と知りてなほあこがるる
(上田清美 喜望峰に立ちたし 青磁社)
**********************************
お目にかかったことはないが上田清美さんの歌集が送られてきた。白珠で長く歌を作ってきた方らしい。オノマトペの使い方の思いきりのよさに驚く。またご自身の老いを詠うことも多いが、これは自虐なのだろうか。ご夫婦の仲のよい様子など、羨ましく読んだ。
独り言吐きたる夕べ俎板に耳たぶほどの百合根散らばる
足早に交差点渡る人の波春宵一人ああをばさんもゆく
濃みどりの銭苔生ふる湿地ゆけば中年期なる体にほへり
嘘すこし交へて書ける近況の最後の句点ためらひて打つ
ベランダに干せばくるくる揺れてゐる子の婚の日に履きし白足袋
新京極スター食堂のA定食母に連れられ食みし幼日
新ジャガの煮物ほこほこつるりんこ夫とふたりの夕餉の楽し
ああこれがわが後ろ姿 のそのそとビデオ画面に老人が行く
喜望峰にいつか立ちたし嵐吹く岬と知りてなほあこがるる
(上田清美 喜望峰に立ちたし 青磁社)
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お目にかかったことはないが上田清美さんの歌集が送られてきた。白珠で長く歌を作ってきた方らしい。オノマトペの使い方の思いきりのよさに驚く。またご自身の老いを詠うことも多いが、これは自虐なのだろうか。ご夫婦の仲のよい様子など、羨ましく読んだ。