気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

パンの耳④

2021-03-21 12:03:32 | つれづれ
両足を落としてしまわないように深く躰に差して歩きぬ
正しいはいくつもあってからまって だから私に好きにしますね。
(添田尚子)

永遠の子どもが暮らすネバーランド左まわりに時もどりゆく
とちのきの枯れ葉が肩をかるく打つ天使に呼びとめられたみたいに
(弓立 悦)

外つ国の子らに届けるヘヤドネーション艶ありし日の我を知る髪
人をらぬ庭のつくばひ雨だれのひとつひとつが話しかけくる
(乾 醇子)

鬼灯の袋の中の空洞は寂しさならむ朱き玉抱く
古代朱を溶かむと白き皿に出し凝りし膠を湯煎にかける
(小坂敦子)

孤独とはむしろすがしさ夕庭の低きに白く都わすれが
いま少し続けてみようごく稀に曇りなき一枚縫ひ上げしとき
(森田悦子)

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松村正直さんとカルチャーの生徒さんとの冊子「パンの耳④」が出た。
一首を丁寧に作ることは勿論大切であるが、15首連作となればテーマが要る。テーマを意識しながら、テーマから外れた歌も入れることで、連作がより引き立つ。全体のバランスを考える必要がある。14名が参加。