父の背がラッシュに紛れ地下鉄のどこかにあらむ黄泉平坂
行き先を巻き上げている路線バスが右折するまで眺めてしまう
天金の昏きをぬぐいやりたれば人差し指の腹がくすみぬ
「バン」「鷭」とスマートフォンに顔寄するヒトを見つめる鷭といふ鳥
ここまでの運転士さんが座布団をわきにはさみてホーム歩めり
自転車の鍵をさぐればポケットのなかで最初に触るるクリップ
俯きて図書館に来て俯きて出でゆく子らの手のひらの画面
ショーに出ぬイルカの尾びれ見えてゐるショーのプールの奥の水面
さみしいと言はばあなたは困るだらう凭れゐるドア次開きます
見てをらぬすきにとととと走るらむ尾羽揺らして若冲の鶏
(白石瑞紀 みづのゆくへと緩慢な火 青磁社)
行き先を巻き上げている路線バスが右折するまで眺めてしまう
天金の昏きをぬぐいやりたれば人差し指の腹がくすみぬ
「バン」「鷭」とスマートフォンに顔寄するヒトを見つめる鷭といふ鳥
ここまでの運転士さんが座布団をわきにはさみてホーム歩めり
自転車の鍵をさぐればポケットのなかで最初に触るるクリップ
俯きて図書館に来て俯きて出でゆく子らの手のひらの画面
ショーに出ぬイルカの尾びれ見えてゐるショーのプールの奥の水面
さみしいと言はばあなたは困るだらう凭れゐるドア次開きます
見てをらぬすきにとととと走るらむ尾羽揺らして若冲の鶏
(白石瑞紀 みづのゆくへと緩慢な火 青磁社)