気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

みづのゆくへと緩慢な火 白石瑞紀 青磁社

2019-01-14 19:45:47 | つれづれ
父の背がラッシュに紛れ地下鉄のどこかにあらむ黄泉平坂

行き先を巻き上げている路線バスが右折するまで眺めてしまう

天金の昏きをぬぐいやりたれば人差し指の腹がくすみぬ

「バン」「鷭」とスマートフォンに顔寄するヒトを見つめる鷭といふ鳥

ここまでの運転士さんが座布団をわきにはさみてホーム歩めり

自転車の鍵をさぐればポケットのなかで最初に触るるクリップ

俯きて図書館に来て俯きて出でゆく子らの手のひらの画面

ショーに出ぬイルカの尾びれ見えてゐるショーのプールの奥の水面

さみしいと言はばあなたは困るだらう凭れゐるドア次開きます

見てをらぬすきにとととと走るらむ尾羽揺らして若冲の鶏

(白石瑞紀 みづのゆくへと緩慢な火 青磁社)