窓の灯にそれぞれ暮らしある事をほつほつ思いほつほつ歩く
耳たぶのたぶがぽろっと取れそうで市役所前で飲み込んだガム
靴下を穿く脱ぐなどを繰り返しつつちちぷぷと一年は過ぎ
「楽しめ」とブロッコリーが言うのです熱いシチューの中で何度も
コンビニを出でて小暗き道ゆけば「温めますか」の「か」が冷えてゆく
テーブルの下に父、母、われ必死にうずくまりたり「よかね、大丈夫ね、」
熊本城天守閣の瓦ぼろぼろにああぼろぼろに崩れ落ちたり
駅前の銀行のドアは開いていてしゃきしゃき下ろす五万円ほど
三日月が小舟のように浮かびたる夜を仄かな灯火とせり
葉にしずく手の中に風一点の抒情は深く呼吸しており
(古賀大介 三日月が小舟 六花書林)
***********************************
短歌人所属の古賀大介の第一歌集より。熊本在住。
「ほつほつ」「ちちぷぷ」「ぼろぼろ」「しゃきしゃき」など、擬態語を多用している。音に引かれて、次の音を導く。熊本地震の歌は、方言の話し言葉で臨場感を出す。
耳たぶのたぶがぽろっと取れそうで市役所前で飲み込んだガム
靴下を穿く脱ぐなどを繰り返しつつちちぷぷと一年は過ぎ
「楽しめ」とブロッコリーが言うのです熱いシチューの中で何度も
コンビニを出でて小暗き道ゆけば「温めますか」の「か」が冷えてゆく
テーブルの下に父、母、われ必死にうずくまりたり「よかね、大丈夫ね、」
熊本城天守閣の瓦ぼろぼろにああぼろぼろに崩れ落ちたり
駅前の銀行のドアは開いていてしゃきしゃき下ろす五万円ほど
三日月が小舟のように浮かびたる夜を仄かな灯火とせり
葉にしずく手の中に風一点の抒情は深く呼吸しており
(古賀大介 三日月が小舟 六花書林)
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短歌人所属の古賀大介の第一歌集より。熊本在住。
「ほつほつ」「ちちぷぷ」「ぼろぼろ」「しゃきしゃき」など、擬態語を多用している。音に引かれて、次の音を導く。熊本地震の歌は、方言の話し言葉で臨場感を出す。