三月の雨の眼をもて眺めゐる街木の株にひこばえあるを
(斎藤典子)
さきがけて春をうたふと上気せるやうに紅濃し河津ざくらは
(蒔田さくら子)
畑中に重機ひとつがはたらいて地球のうへに穴を掘りゆく
(小池光)
空晴れて葉書10枚買いにけり誰に届けん春の便りを
(小林登美子)
本閉ぢてみやる車窓に「鳩レース協会」のビル過ぎてゆきたり
(佐々木通代)
厨事なしつつ唄ふ早春譜ことば違(たが)はず幾度もうたふ
(山下柚里子)
使はれずなりしあまたの旅客機がモハビ砂漠に翼よこたふ
(秋田與一郎)
花びらのごときみどりごの服干して小ぶねに暮らす家族を見たり
(金沢早苗)
ぶるるんと左右に小さく振りしあと今日の私の顔出来上がる
(山本栄子)
ありありと戦後の記憶みなの靴みがいてくれき失意の父は
(加藤満智子)
****************************************
短歌人6月号、同人1欄より。
(斎藤典子)
さきがけて春をうたふと上気せるやうに紅濃し河津ざくらは
(蒔田さくら子)
畑中に重機ひとつがはたらいて地球のうへに穴を掘りゆく
(小池光)
空晴れて葉書10枚買いにけり誰に届けん春の便りを
(小林登美子)
本閉ぢてみやる車窓に「鳩レース協会」のビル過ぎてゆきたり
(佐々木通代)
厨事なしつつ唄ふ早春譜ことば違(たが)はず幾度もうたふ
(山下柚里子)
使はれずなりしあまたの旅客機がモハビ砂漠に翼よこたふ
(秋田與一郎)
花びらのごときみどりごの服干して小ぶねに暮らす家族を見たり
(金沢早苗)
ぶるるんと左右に小さく振りしあと今日の私の顔出来上がる
(山本栄子)
ありありと戦後の記憶みなの靴みがいてくれき失意の父は
(加藤満智子)
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短歌人6月号、同人1欄より。