気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人4月号 同人のうた

2016-03-31 22:57:20 | 短歌人同人のうた
うつりきてなほ平積みにつむ本の山のうへにも春立ちにけり
(青輝翼)

古書の海、珈琲、煙草、老店主のこれがスタイル客をらずとも
(八木明子)

薄氷のあひに柄杓をさし入れてしづもる水の眠りをさます
(洞口千恵)

「神様に返されし命」何にでも挑みてみむと思ふ早春
(有沢螢)

だんだんとかばんが小さくなりてゆく なくてはならぬものなどなくて
(鶴田伊津)

猫の毛のまつわれる黒きスーツ着て一日この猫とともにはたらく
(内山晶太)

冬の陽はあまねく家具にふりそそぎ無疵のバターに刃を当つる朝
(木曽陽子)

いつぽんの素心蠟梅見むためにまはり道せりきさらぎ七日
(佐々木通代)

緘黙の少女が唯一声を出すインフルエンザ予防のうがい
(八木博信)

朝の手のゆるびたるまま時すぎてますぐならざる文字をかなしむ
(伊藤冨美代)

***********************************

短歌人4月号、同人1欄より。