気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人6月号 同人のうた

2014-06-11 21:35:48 | 短歌人同人のうた
雑巾がけして嬉しかりけるひと日過ぎしづやかにまた春の塵積む
(酒井佑子)

春の田にゴミ袋がと見てあれば白鳥なりしとおどろきし人
(三井ゆき)

月見うどんの月くづるるを泣きし子がいつともなしに三人子(みたりご)の父
(和田沙都子)

塗箸の先の方しか濡れてない品良き人と真向ひに座す
(澤志帆)

こぶりなる若狭の鯛のぎんいろの雨ふるひるを濡れつつ歩(あり)く
(佐々木通代)

父が言へば「ぢうにゆう」となる牛乳は父が居らねば冷蔵庫になし
(洞口千恵)

満員の山の手線に『石泉』を読みゐる人のもう一人あれ
(山寺修象)

漲れる頬のおさなご笑まうたび二月の電車にひかり生れたり
(平林文枝)

いまはもう生家はあらず横丁の鳩公園に桜咲くころ
(庭野摩里)

半世紀前の自分にしみじみと見入る父なり虫眼鏡にて
(武藤ゆかり)

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短歌人6月号、同人1欄より。