気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

昨日の朝日歌壇 うた新聞11月号

2013-11-11 20:41:46 | 朝日歌壇
戯れにブロンズの「手」を真似みればさびしくのぼる血管の青
(垂水市 岩元秀人)

糠床の昨日の空気揺り起こし今日をゆるゆるかき混ぜる朝
(松阪市 こやまはつみ)

会いたいといふひとひとりあるうちは生きてていいよとすすきがわらふ
(瀬戸内市 児山たつ子)

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一首目。ある年齢を越すと、静脈の青さが浮き出てくるように見える。戯れに彫刻の手をまねたとき、そんな老いの兆候を感じた作者。四句目の「さびしくのぼる」がいい。
二首目。糠床は毎日かき混ぜて空気を入れてやらねばならない。わたしも何度か挑戦したものの、続かなかった。朝はパンという習慣の人間には縁のない話ではあるが・・・。揺り起こし、ゆるゆるの「ゆ」のリフレインも面白い。
三首目。だれでも生きていて当然で、何も引け目を感じることがないのに、ふと消えてしまいたくなるときがある。ひとりでも会いたいという人がいれば、という気持ちはよくわかる。結句で「すすきがわらふ」と自然に目を向けて歌になった。作者の気持ちの揺れと余裕が感じられた。

うた新聞11月号の歌壇時評で、小谷博泰氏が、岩尾淳子さんの歌集批評会、私の歌集批評会に参加したことを記事に書いてくださった。もう半年以上も前のことなのに、取り上げていただいてうれしい。また、歌友の岩尾さんと並んで評されていることもうれしかった。岩尾さんは短歌や文学、文法に詳しく技巧派。わたしは「てんねん」。
お互いに切磋琢磨しつつ、歌を続けていきたい。そして、いつまでもいい友達でいて欲しい。小谷さん、ありがとうございました。