気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人12月号 同人のうた その2

2011-12-13 21:50:46 | 短歌人同人のうた
けづりたての鉛筆のやうな香をもちて秋は来にけり無人の家に
(金沢早苗)

病院へ行く道ハッピーロードなる名は悲しいと妻言う今日も
(宮田長洋)

金魚鉢のなかなるわれや赤きべべひねもす硝子に映す秋の日
(有沢螢)

病み臥して五年を経たり三人子(みたりご)に助けられつつ楽しき日々や
(多久麻)

水曜日週の半ばと疲れたる身は廃船のごとく揺らげる
(藤原龍一郎)

夜まつりの御輿かつぐと白足袋の白を揃えて月の出を待つ
(平野久美子)

子の放つバトンは秋のあをぞらに弧を描きたり歓声のなか
(宇田川寛之)

萎むにも力が要ると花が言ふ一日花のゆふがほの唇(くち)
(大森益雄)

寄り合ひて生ける浅蜊が夜を越す厨の闇をおもふ寝(い)ねぎは
(蒔田さくら子)

携帯の画面に小さき灯をともしこの世に生きるひとりを探す
(森澤真理)

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短歌人12月号、同人1欄より。

多久麻さんは、先月亡くなられた。これが絶筆だろうか。「楽しき日々や」という結句に救われる。ご冥福をお祈りします。