気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-12-05 18:30:57 | 朝日歌壇
チェイン・ソーでメープルを切る太き腕ゆれればタツーの紅葉(もみじ)もゆれる
(アメリカ 西岡徳江)

長明に芭蕉ばななに春樹ゐる異国の本屋にマヤ暦を買ふ
(グアテマラ 杉山望)

喫茶店も茶房も少しずつ消えてガラス張りなるカフェに語る
(茨木市 瀬川幸子)

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一首目。タツーはtattoo(入れ墨)のことだろう。日本では一般的でないが、外国では割と気軽にタトゥーを入れるらしい。タツーよりタトゥーの方に言葉としては馴染みがある。一時期、肩などにタトゥーのシールを貼るのが流行っていたが、私はそれさえも抵抗があった。歌からは、メープル(楓)を伐採するたくましく太い腕の男性の躍動感、力強さが伝わる。
二首目。作者はグアテマラにお住まいのようなので、現地の書店だろう。日本人客向けにすこしは日本の本を置いてあって、それが鴨長明、松尾芭蕉、吉本ばなな、村上春樹。「芭蕉ばななに春樹・・」のところだけを読むと植物園のようで面白い。私もアメリカの書店に買い物に行ったとき、大きな帆布のトートバッグを買い今でも使っている。ジェイムズ・ジョイスの顔写真が描いてある。素材の面白さで読ませる歌。
三首目。そう言えば、昔風の喫茶店はちょっと暗い雰囲気だった。いまはオープンカフェのような明るい店、スタバやドトールが幅を利かせている。四条河原町の「築地」などは何年かに一回行くだけだが、いつも変わらない雰囲気で、あれを維持するのはけっこう大変だろうと思う。今もあのままの店であることを祈る気持ちになる。歌は、結句が六音に読まれがちなので、カフェーとするか、「語る」を「語らう」とすればどうだろう。