気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-08-01 19:20:13 | 朝日歌壇
もどらない下巻のためにまつてゐる上巻はすきまに身をかたむけて
(大阪市 末永純三)

子をジャズの虜としたる訳なにか調べつついまはまり込みたり
(静岡市 篠原三郎)

油揚げひじき人参とうがらし買物メモが姉の絶筆
(宇治市 山本明子)

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一首目。小説の上巻と下巻は対だから、両方が揃わない限り借りられることはないのだろうか。上巻を読んでいるうちに下巻が帰ってくるだろうから、取りあえず上巻を借りるということを、私ならするけれど。
この上巻と下巻を入れ替えると意味が微妙に変わってくる。下巻だけなら、まず借りる人はないだろう。こっちの方が切ない。
短歌として見ると、二句目に下巻を入れると、二句目が七音、四句目が九音。四句目は字余りを許容する場所だから、すんなり納まる。逆だと、58585となる。これも許容範囲内。
また夫婦、恋人など男女関係に力の差のある場合の癒のようにも読める。
上巻、下巻を逆にしたくなってきた。行き場なく待っている下巻に共感してしまう。
二首目。この歌もまさにわが家の状況そのもの。息子の置いていったジャズのCDを、BGMにいつも聴いている。
三首目。主婦ならそういうことになるのだろう。油揚げ、ひじきなど身近で贅沢でない食材に生活感があって切ない。このところ、河野裕子『蝉声』と竹山広『地の世』を続けて読んで圧倒されている。