気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

幻月  長谷川と茂古  

2011-01-08 01:14:55 | つれづれ
たくさんの問ひや答へが繁りをり公園にきて煙草を吸へば

「恵まれた環境ですよ」移り来し科学のまちは自死おほき街

いつせいにさやぎし枝の黙したり 今ゆるやかに天使が通る

二次会をパスして電車にぼんやりとがたごとぐでんゆゆらられれれ

愛知らぬASIMOは走るぬばたまの黒き面(おもて)に人を映して

はるのみづ吸ひ上げ頭蓋重たきをごろり転がす春昼である

何方(いづかた)の人のたましひ運ぶらむ くれなゐの蜻蛉(あきつ)目の前を過ぐ

日和見の世渡り上手みぎひだり冷蔵庫さへいづれにも開(あ)く

消費社会楽しむために<お金では買へないものがある>とふ神話

髪型も服も雑誌と同じもの<自分>を探すあなたが見えない

(長谷川と茂古  幻月  ながらみ書房)

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中部短歌会所属の長谷川と茂古さんの第一歌集を読む。
長谷川さんは、つくば市在住。短歌人の全国集会がつくば市であったとき、参加してくださった記憶がある。お名前の「「と茂古」は、おそらく「ともこ」と読むのだろう。
不思議な名前で一度見たら忘れられない。一瞬、長谷川と茂吉と誤読してしまう。

私より数年?若い主婦のようだが、歌そのものに家族が登場することはない。独りの歌人としての歌がならび、さっぱりしていて心地よい。
一首目は巻頭の歌。煙草を吸う女性の歌は珍しい気がする。いつも頭の中に問いがあり、答えを探しているのだろう。結婚していても精神的に独立した女性を感じる。
四首目の下句は、電車のゆれそのものを歌の言葉にして面白い。たしかに電車はそう揺れそうだ。冷蔵庫の左右開閉を日和見と見立てたのも慧眼だと思った。