気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2010-06-15 15:14:14 | 朝日歌壇
薫風に白手袋して職員が被爆者名簿の「風通し」をす
(三原市 岡田独甫)

この国に五百の雨の名のあるをうべない今朝の雨音を聴く
(京都市 箕坂品美)

殺処分待つ牛がふと飼い主にいつもの朝のように顔寄す
(行方市 鈴木朝子)

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一首目。この季節に衣類の虫干しをすることは知っていたが、被爆者名簿も虫干しされることをはじめて知った。「風通し」という言葉も的を射ている。「風通し」しながら風化させてはいけないことを再確認する行為。白手袋が効いている。
二首目。五百の雨の名があるとはすばらしいことだ。雨の季節、いまの雨の言葉を知りたくなる。小中英之は、短歌を作る意味として、季節の言葉に触れることを挙げていたと思う。
三首目。口てい(字が出ません)疫に関わる殺処分の歌がたくさん投稿されているようだが、この歌が一番切なく迫ってくる気がした。