気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

佛飯

2008-11-11 23:53:57 | きょうの一首
朝かれひをはるころ雪の乱れては鳥に佛飯を投げるやう降る
(森岡貞香 百乳文)

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『百乳文』は森岡貞香の第六歌集。これを読みはじめているが、難解。歌の調べが定型に収まらず、わざとひっかかりや「のめりこみ」を作っているようで、すんなり読めない。
あとがきには、「短歌の虚構性をいうことについて、考えることは多々あるのだが、定型とそこに置かれる言葉と言葉がお互いにのめりこみあう、といったところに関心がある」と書いてある。
掲出歌は、朝食の終わるころ雪がたくさん降ってきて、まるで鳥にあげる佛飯のようだ、と読める。読み自体はわりとわかりやすい。佛飯は、仏壇に供えたご飯。これを「お下げ」して来る。冷えたり、干からびていれば、勿体ないが捨ててしまうこともある。鳥の餌にするのは、まことに正しい処理の仕方だと思う。食パンの耳を鳥に投げてやるのに似ている。雪がぼたん雪で、大きかったので、佛飯という言葉が出てきたのだろう。生活に密着した比喩だと思った。作者が真っ当に暮らしているのが読み手に伝わる。
ちょっと季節外れながら、取り上げてみました。