気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

牧歌  石川不二子

2008-07-19 00:00:27 | つれづれ
農業実習明日よりあるべく春の夜を軍手軍足買ひにいでたり

睡蓮の円錐形の蕾浮く池にざぶざぶと鍬洗ふなり

母山羊と仔山羊がながく呼びかはす合歓の葉すでに眠るゆふべを

みづみづしき相聞の歌など持たず疲れしときは君に倚りゆく

化粧水の瓶にやさしき陽がさしてわれのはたちは今日にて終る

ルナアルの「博物誌」一冊あてがはれ置去られたるわれとこがらし

(石川不二子 牧歌)

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石川不二子の第一歌集『牧歌』を読む。題名どおり牧歌的だが、農業に関わる仕事と暮らしは、アニメで見るアルプスの少女ハイジのような平坦なものではなく厳しい自然との闘いの日々である。『牧歌』は、昭和二十九年、第一回短歌研究新人賞次席となったころから昭和五十一年までの作品を収めているので、歌数が多く、どれを引用するべきか迷うが、まずは最初の初々しい歌を挙げてみた。
数ヶ月前に読んだ『ゆきあひの空』を思い出しながら読むと、なおさら味わいが深い。短歌を作り始めたのが遅かった私には、こんな若々しい歌はない。
短歌研究詠草欄で、何度か取り上げていただき的確な批評を書いていただいたこともあり、石川不二子氏には、なんともいえぬ親しみを持っている私である。

玉子サンドの作り方など電話にて問ひくる娘に幸せよ来よ
(近藤かすみ)