玄関に放り出されたランドセルの脇より生える木琴のバチ
街川に自転車いくつ水漬きをり死ぬには永き歳月が要る
萍(うきくさ)の葉のめぐりなる水の面絹のうねりす雨ふる前を
やはらかきふるき日本の言葉もて原発かぞふひい、ふう、みい、よ
雁の列より離れゆく一つ雁おもひて書きぬ退職届
甕(かめ)ゆれて遅れて揺るる甕の中の水のやうなりこころといふは
長女、就職
早寝して子はみづからの歳月を生き始めをり夜の霞草
(高野公彦 天泣 短歌研究社)
********************************
高野公彦の第八歌集。平成五年から六年にかけての作品が収められている。高野はこの歌集で、第一回若山牧水賞を受賞。
この時期、永らく勤めた出版社を辞め、青山学院女子短大に再就職。職場を変わることの微妙なこころが詠われている。
高野公彦の歌に、よく出てくるのは、水と自転車。
一首目は、この両方が出てきて、いかにも彼らしい歌。捨てられて役に立たなくなっても片付けられない自転車に、自らの死までの遠い道のりを重ねている。しかし、突然やって来る死もあるのだ。
二首目の萍の歌の、雨ふる前の絹のうねり、五首目の甕のなかの水・・・なんて繊細な表現だろうと感心する。
メールにて娘の告ぐる新住所GoogleEarthでわれは見に行く
(近藤かすみ)
萍(うきくさ)の葉のめぐりなる水の面絹のうねりす雨ふる前を
やはらかきふるき日本の言葉もて原発かぞふひい、ふう、みい、よ
雁の列より離れゆく一つ雁おもひて書きぬ退職届
甕(かめ)ゆれて遅れて揺るる甕の中の水のやうなりこころといふは
長女、就職
早寝して子はみづからの歳月を生き始めをり夜の霞草
(高野公彦 天泣 短歌研究社)
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高野公彦の第八歌集。平成五年から六年にかけての作品が収められている。高野はこの歌集で、第一回若山牧水賞を受賞。
この時期、永らく勤めた出版社を辞め、青山学院女子短大に再就職。職場を変わることの微妙なこころが詠われている。
高野公彦の歌に、よく出てくるのは、水と自転車。
一首目は、この両方が出てきて、いかにも彼らしい歌。捨てられて役に立たなくなっても片付けられない自転車に、自らの死までの遠い道のりを重ねている。しかし、突然やって来る死もあるのだ。
二首目の萍の歌の、雨ふる前の絹のうねり、五首目の甕のなかの水・・・なんて繊細な表現だろうと感心する。
メールにて娘の告ぐる新住所GoogleEarthでわれは見に行く
(近藤かすみ)