気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

竹叢 岡部桂一郎

2008-04-09 20:17:47 | つれづれ
青き帽子すこしあみだにかぶりたる味塩の瓶 右手にぞ振る

あいうえお またかきくけこ佇める紺の絣の少年いずこ

その歌をわたしにくださいわが母よ青梅ひとつ地に落ちている

わが居らぬ七畳半のたそがれを人呼びている長き電話は

北上のしずけき大河 かえらざる時は流れて人泣くところ

夕暮れて塒にかえる鳥がある三歳のわれその父知らず

(岡部桂一郎 竹叢 青磁社)

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岡部桂一郎全歌集を読みはじめる。まずは、読売文学賞をとった最新歌集『竹叢』から。
大正4年生まれ、93歳の歌は、自由にのびのびと詠われている。
この人のキーワードとして、夕暮れ、七畳半という言葉がくり返し出てくる。
北上の歌は、啄木へのリスペクトとして読んだ。年を重ねて、また少年のような境地に達しておられるのだろう。 

シグナルのランプの中に描かれて帽子の紳士どこへも行けぬ
(近藤かすみ)