気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2008-04-01 00:26:12 | 朝日歌壇
薄氷にはりつきし黄蝶に朝陽さすこんなに美しく死ねるなんて
(岐阜市 棚橋久子)

入鋏の音まぼろしに聞きながら桜に膨らむ駅に降り立つ
(東京都 柴田佳美)

花かんむり頂いたような姉でした草かんむりの我置いて逝く
(多摩市 稲垣厚子)

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一首目。一読美しい歌。黄蝶と色まで書いたことで、歌が引き立った。字余りを懼れていては、こうは詠めない。この一押しが私には足りない。
二首目。今は、自動改札の駅がほとんどだから切符に鋏をいれるというのも、懐かしい風景である。桜に膨らむ駅の「膨らむ」が良い。たっぷり咲いている様子がたくみに言い表わされている。聴覚から視覚への転換もおもしろい。
三首目。亡くなったお姉さまへの挽歌。花かんむりを頂くような華やかな女性だったのだろう。妹である作者は草かんむりだから、やや地味な存在だったことが想像できる。漢字の部首に草かんむりはあって、花かんむりはないが、あってもおかしくないような気にさせる。花かんむり、草かんむりの対比が姉妹の個性をうまく表現している。

良き日とはこんな春の日ことさらにひとに言ふことなき日が暮れる
(近藤かすみ)