気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2006-11-20 22:22:33 | 朝日歌壇
診察を待つ人なべて押し黙り音なきテレビの紅葉に見入る
(横浜市 斎藤悦)

朝な朝なコーヒー購う自販機の発する言葉も親しみて聞く
(日高市 国分道夫)

中年の女は突然年をとる茜の空に秋雲の浮く
(横浜市 滝妙子)

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一首目。病院の待合室でのよくある光景。テレビの映す自然の美しさがいつまでも続かないことを、患者は健康への不安を重ねて見ている。テレビの音がないのもより効果をあげている。
二首目。朝の習慣のようにおなじ自販機でコーヒーを買っていると、そのお決まりの声さえも親しく感じられた作者。コーヒーの自販機だとそう罪はないが、病院の自動支払機の「おだいじに」の音声に、わたしはまだ親しめないままだ。
三首目。真実を言いあてた恐ろしい上句である。もういまさらどうしたらいいんだろう。しかし世の中には、妖怪か魔女かと思うほど、年をとっていても綺麗な女の人がいるのである。くやしい。下句は何が来ても、上句のインパクトに合ってしまう気がする。