気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2006-09-11 11:17:27 | 朝日歌壇
今日も妻ボランティアより帰りきて夕餉の鯖の味噌煮焦がせる
(小田原市 田口誠一)

遠足に行くみたいだと病む妻は入院準備をさびしく笑う
(河内長野市 西川正治)

数学の補習授業をさぼりたる幼い理屈 つくつくほうし
(愛知県 山本早苗)

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一首目。つつましく殊勝なご夫婦だと思う。わが家なら「今日も妻歌の会より帰りきて夕餉のコンビニ弁当チンす」とでもなるのだろうか。ボランティアと鯖の味噌煮が作者の奥さまの人柄をしのばせる。
二首目。入院の準備のパンフレットは、ときどき古くて実情にあっていないことがある。でも患者としては文句を言うわけにも行かず、さびしく笑いながら準備をするしかない。病弱な妻を見守る夫のまなざし。
三首目。短歌は結句に跳んだ発想の言葉を持って来いと言われるが、これはその成功した例。理屈 つくつく・・・の音の遊びがおもしろい。「幼い」が口語だが、それもまた幼さを演出しているのだろう。