気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2006-06-12 18:46:42 | 朝日歌壇
定年後ぶつかり合って部屋せましトイレ、キッチン、テレビの前で
(横浜市 田村泰人)

縞蛇が若草色の膚(はだ)をして若草に融け消えてゆきたり
(山形県 黒沼智)

仲の良い夫婦みたいね夫と吾よいしょよいしょとひとつ荷運ぶ
(新潟市 太田千鶴子)

***********************

一首目。男の人の名前なので、ご自身が定年になって家に長時間いるようになり、あちこちでぶつかるようになったという歌。ぶつかるというのは、身体だけでなく感情も衝突するのだろう。一日中、亭主が家に居るなんて、想像するだけでもおそろしい。せいぜいそれぞれが別に出かける場所を作っておかなければならない。個室、個パソも必要。しかし、私は「あなた今まで大変だったでしょ。みんなあなたのおかげよ」なんて言うんだろうな。あちらはおそらく聞いていないが。

二首目。若草という言葉が二度出てきて、それが効果をあげている。縞蛇の勢いが目に浮かぶようだ。

三首目。これも夫婦の歌。一読、納得する。夫婦円満の秘訣は演技力。仲の良い夫婦のふりをしていると、どうにか乗り越えられる気もする。世間体も良い。加えて、昔のことは忘れる、期待しない、「話せばわかる」という幻想は抱かない・・・などなど、こちらは作戦を考え中。ボケたら勝ちかもしれない。