気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2006-06-05 22:18:29 | 朝日歌壇
山椒の若芽を噛むや香のたちて急に鰻が食ひたくなりぬ
(山形県 清野弘也)

友からの文の幽(かそ)けき薬香に御母看ておるその手を想う
(カナダ 堀千賀)

襟高く立ててどれもが水芭蕉思い思いの方を見て咲く
(岐阜県 青山武美)

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一首目。山椒の若芽の香から、鰻を連想して食べたくなったという素直な歌。茂吉も鰻が好きだったとか。そう言えば最近読んだ吉川宏志『曳舟』にも、こんな歌があった。「夏至過ぎて雨多きかな切られたる鰻が飯のうえでつながる」吉川宏志。私も鰻が食べたくなってきた。

二首目。手紙に香りまで付いてくるのだろうかと思いながら、やはり納得した歌。母親を看病している友達を思いやる気持ちがやさしい。御母という言葉に、作者の品を感じる。

三首目。たしかに水芭蕉の花びらは立てた襟のように見える。プライドの高そうな花がそれぞれ勝手な方向を向いて咲いているのがわかる。