気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2005-11-28 22:47:00 | 朝日歌壇
古きギターばららんと弾く指先にとおき日の秋ばららんと鳴る
(夕張市 美原凍子)

黄葉(もみじ)透く光満ちたる登山道エゾシマリスのくるくる弾む
(札幌市 はづきしおり)

合併後はふじみ野市とす隣接の富士見市からの抗議はあれど
(所沢市 若山巌)

自転車でぐいっぐいっと坂のぼる子を先頭に突っ立ってこぐ
(東京都 豊英二)

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一首目。最初の「ばららん」とあとの「ばららん」は微妙にちがう。絃を弾こうとする瞬間の期待された音と、実際に鳴った音がちがうから。そのちがいに年月の遠さを作者は感じたのだろう。
二首目。文句なく明るく秋らしい歌。くるくるという言葉がまさに弾んでいる。
三首目。埼玉県の新しい市の名前についての歌。以前、愛知県で南セントレア市という名前が候補になって、結局なくなったことがあった。市の名前にひらがなを混ぜるのは、親しみやすさを狙っているのだろうか。こういうときに審議会があるとすれば、地元の歌人を呼んで、延々と討議させればよかろうに。
四首目。佐佐木幸綱の選。佐佐木幸綱の歌で「のぼり坂のペダル踏みつつ子は叫ぶ「まっすぐ?」、そうだ、どんどんのぼれ」を思い出す。

街の名は南セントレア早春の風のたはむれに疾く散りゆけり
(近藤かすみ)