「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.672 ★ 大卒の内定率は5割以下、低学歴だと出世もムリ…中国の若者を苦しめる「激烈・競争社会」驚愕の実態

2024年09月22日 | 日記

現代ビジネス

2024年9月20日

残酷なほど厳しい競争に苛まれ、希望すら持てない――中国の若者を取り巻く環境は過酷だ。「昇龍」と言われた経済大国は、どこへ向かうのか。遠くて近い隣人の素顔を明かす。

大卒では就職も出世もムリ

Photo by gettyimages

「在学中に数十社の面接を受けて、ようやく金融関係の会社に就職することができました。給料は6000元(約12万円)で中国の水準では悪くないものの、週末も出勤しないといけないですし、残業代もほとんど出ない。 それだけならまだしも、理数系の修士号や博士号を持っている社員がゴロゴロいて大卒の学歴では太刀打ちできないため、将来的に管理職に就ける見込みはほとんどありません。

 今いる会社を辞めて、修士号を取ってキャリアアップするために大学院入試を受けようかとも思うのですが、毎年400万人以上が受験するので合格率は2割以下。大学受験でも就活でも死ぬほど苦労したのに、この年になってまた受験でつらい思いをするなんて……」 上海市に生まれて、中国国内でも難関として知られる大学を卒業した陳華さん(22歳・女性・仮名、以下同)は、ため息交じりにこう話す。

 2010年にはGDPで日本を抜いて世界第2位となり、2040年ごろまでにはアメリカを超えて第1位に躍り出ると見られる中国。この15年ほど順風満帆に成長してきた経済大国に、暗雲が垂れ込めている。2024年1月~6月の実質成長率は前年同期比5%と落ち込み、毎年10%以上の成長が当たり前だった2000年代の勢いはもう見えない。

 不景気の割をもろに食っているのが中国の若者たちだ。2023年6月には16~24歳の若者の失業率が20%を突破し、過去最低記録を更新。「より正確に実態を反映する必要がある」という建て前で、翌7月から国家統計局が一時データの公表を取りやめる事態となった。 また2024年の大学生の卒業時点での内定率は50%以下。北京大学などの名門を含む「双一流大学」に限っても60%を下回っていて、9割を越えている日本とは比べものにならない。

科挙よりも過酷?

Photo by gettyimages

いったい、中国で何が起こっているのか。大卒者の内定率がここまで悪化している現状について、東京外国語大学教授の澤田ゆかり氏は「需要と供給のミスマッチが原因ではないか」と分析する。 「現在の中国では労働者の高学歴化が急速に進んでいるものの、大学を卒業したホワイトカラー全員を受け入れられるほど働き口は多くありません。

つまり高学歴な労働者の供給が多すぎて、需要とのバランスがまったく取れていないのです。 加えて一人っ子が多いため、子どもの就職先に対する親の期待値も非常に高くなります。介護や建設といった業界では人手が不足しているので仕事がないわけではありませんが、子どもの教育にかけた時間やコストを意識するあまり、それに見合ったホワイトカラーの仕事しかやらせたくない親が多いのです」

 実際に各種の統計データを見てみると、失業率が悪化していくのと呼応するかのように大卒者の数も増えている。その理由について、中国の対外経済貿易大学教授の西村友作氏が解説する。

 「これまで中国で経済危機が起こり労働需要が減少すると、政府は大学や大学院の定員を増やして進学率を上昇させ、労働市場に新規参入する若者を減らすことで需給バランスを調整してきました。 2020年のコロナショックで働き口が減った際も、政府は大学院の定員を2割ほど増やしました。

 景気低迷で労働需要が伸びない中、両者が連動しているかのように見えるのは、ある意味で当然なのです」 今から約1400年前、隋の時代からずっと中国は熾烈な競争社会だった。世界初の官僚登用試験とも言われる「科挙」の合格者だけが得られる莫大な富と社会的な名声を求めて、中国全土から受験者が殺到し、最盛期には倍率が3000倍にまで達したという。

 その延長線上にあるのが、今日の若者を苦しめている激烈な競争社会だ。よりよい大学やよりよい仕事を求めて力を尽くしても、ライバルたちはもっと努力しているので、勝つためにはますます身を削らなければならない――永遠に終わることのない負のスパイラルに、若者たちはずっと苦しめられている。

「週刊現代」2024年9月14・21日合併号より ますます激しさを増している中国の競争社会。しかし戦いは、すでに社会に出る前から戦いは始まっているのだ。後編記事『1日に「18時間」も受験勉強し、ストレスで髪がごっそり抜けた女子も…科挙より過酷な中国「大学受験」の恐ろしい現実』では過酷な大学受験を含め、中国の競争社会にさらに深く切り込んでいく。

週刊現代(講談社)

*左横の「ブックマーク」から他のブログへ移動

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿