カロカンノート

へぼチェス日記

大野城囲碁クラブ ブログより

2016年10月21日 | 日誌
「求道ということ」

現代の日本の学校では、横並び教育といっても過言ではないような教育方針であると聞きます。
よく聞くのは、運動会のかけっこで全員並んでゴールするといったものです。

最近の子どもを見てみると、覇気が無い、物事に執着しない、すぐに諦めるなど、全体的に元気が無いように思われます。
これは、近代日本のような成熟しきった社会で、何を目標にすればいいか分からなくなってきていることや、必要なものは全て手に入るような環境が一因であるかもしれません。
しかし、なによりも、何かに熱中したことが無い、誰かと技を競う、勝負するといった経験が少なくなってきていることも、要因の一つだと思います。

それと、礼儀やマナーなどについても、きちんと出来ていない子どもが多いように思います。
親や教師に暴言を吐いてみたり、道端にゴミを投げ捨ててみたりなど。
そういった礼儀やマナー、道徳について、学ぶ機会も減っているのではないでしょうか。

道徳を教える。
その役目を担うのは当然、保護者や教師の方々でありますが、それ以外にもスポーツや格闘技、それに囲碁や将棋などがあります。

その道のプロのいる世界、競技には、全て「道」という言葉を付けることができます。
この「道」というのは、道徳の「道」であり、踏みしめ、歩んでいく「道」でもあります。

よく言われる言葉で「道を究める」というのがありますが、その意味は、一つのことに徹底してこだわりぬき、決して諦めない強い意志を持ち、最後までやり通すことだと思います。
それが、その人の道となるのです。

剣道、柔道、茶道など、名前に「道」の字が入るものに共通すること、それは相手に対する礼儀を重んじることです。
試合、競技といっても、ただ勝てばいいというわけではない。茶道でも、ただお茶をたてていればいいわけではない。
もちろんそれも大事なことですが、まず相手に礼を尽くすことが最も重要なことなのです。


「礼に始まり礼に終わる」

これは人間が人間として生きていくうえで一番大切なことではないかと思います。
これを自然に無理なく身につけることが出来るのが、先ほど挙げたような競技などです。
しかもこれらは、礼儀、マナーだけでなく、身体的な能力や精神の強さなども共に鍛えることができます。
これらのことは、子どもの成長にとっていい事ですし、大人であっても、仕事や家庭を営む上で役に立つことです。

大昔、人間の男は狩りをして獲物を獲ってきて家族を養い、女は子どもを育てることが第一の役目でした。
しかし、現代になって、命の危険は減り、狩りによる食物の調達もしないで済むようになりました。
このような安寧の時代に生きる我々にとって、男女にかかわり無く、何かの道に習って自己を高める。
こういったことが必要なのではないでしょうか。


「囲碁を打つとどういう効果があるか」

それでは、具体的に囲碁を打つことによってどんな能力を鍛えることができるのでしょうか。
それをこれから説明していきたいと思います。

まずは、先ほども書いたように「礼儀」です。
人に対する礼儀をしっかりするというのは、道徳観の乱れが叫ばれる昨今の現状からすれば、立派な武器、能力だといえます。

囲碁では打ち始める前に相手に対して「お願いします」と言って礼をする。
打ち終わったら「ありがとうございました」と言い、また礼をする。
まさに「礼に始まり礼に終わる」です。

このことは囲碁を打つ者にとっては当たり前のことですが、一般の方にはあまり知られていません。
まずはこれをしっかり習得します。
これができない人は囲碁を打つ資格がありません。
たとえ親しい間柄であっても「親しき仲にも礼儀あり」で、しっかり実践します。

囲碁を打つ上で一番必要なことは、技術でも頭のよさでもなく、礼儀なのです。


次に身体的能力についてですが、当然のことなのですが囲碁では体は動かしません。
ではどこを動かす、いや、働かせるというと、脳です。
囲碁では体を動かす代わりに、脳を目一杯動かします。
このことにより、脳機能が鍛えられます。

脳は生まれてから十代の間まで成長します。
その間は脳細胞が活発に生成され、情報を処理し、伝達する細胞間のつながりも強化されていきます。
ところが、脳が成熟しきった後に脳を使わず生活していると、脳機能は衰えていく一方となります。
そこで脳に定期的に何らかの刺激を与えることで、脳機能の衰えを食い止める効果があります。

大人になると、脳細胞間のつながりを増やすことはできません。
脳が成熟すると脳細胞間のつながりを作る働きがストップしてしまうからです。
しかし、脳細胞間の情報伝達の速さ、効率は大人になっても向上させることが可能です。
人が仕事を覚え、慣れてくると効率よく作業できるようになるのと同じで、脳も学習するのです。

囲碁などのテーブルゲームがボケ防止に効果があると言われるのは、このことがあるからです。

それでは、囲碁を打つことにより、脳のどんな機能が鍛えられるのでしょうか。


「左脳は情緒、芸術的分野 右脳は論理、数学的分野を司っている。」

ご存知の方も多いかと思われますが、脳は感情や情緒、言語を司る左脳と、論理敵思考や数学的思考、空間能力を司る右脳とに分かれます。
それぞれ役割を分担し、効率的に情報を処理するために働いています。

実は、囲碁を打つことで、右脳も左脳も鍛えることができます。
これは、他のテーブルゲームにはない要素なのです。

どういうことなのか詳しく説明していきます。

 地の計算や、石の使い方、手を読むことによって右脳を鍛えることができ、自分なりのアイディアで自分の碁を打つことで、左脳が鍛えられる。

○左脳分野

洞察力

相手の打った手を見て
それが何を意図しているのかを見抜く力

大局観

盤面全体を見通し、小事に拘わらず大事に就く力

発想力

奇抜な着想、手筋などを思いつく力

創造力

自分の碁を作り上げていく力


○右脳分野

論理的思考能力

定法、理論に則り、組み合わせて使う力

数学力

地の計算を正確に行う力

戦略的思考能力

作戦を練り、実行していく力

観察眼

盤上の隅々まで観察する力

空間認識力

石の形を一つの図として認識する力

推理力

相手と自分の着手を正確に予想する力

分析力

一方に偏らず、現状をしっかり分析する力



これらのことを繰り返し経験することで
それぞれに対応する分野が鍛えられていきます。

さて、囲碁で鍛えられるのは脳だけではありません。
囲碁界は勝負の世界です。
勝負というからには、当然のことながら負けることもあります。
勝つだけではなく、負けを経験することで精神的に成長できます。
これは、年齢、性別に関係なく言えることです。
勝負を繰り返すことで、精神に好影響を与えます。

具体的には

○勝つために努力を続ける根気強さ

○負けが判った時点で負けを認める潔さ

○軽率な着手を慎む慎重さや思慮深さ

○良いと思ったことを即行動に移す実行力

○ここぞといったときに発揮される勝負強さ

○好手を模索する探究心

○自らの能力を上げたいと願う向上心

○自分の打った手を活かしていくプラス思考

○相手の奇手にも対応できる臨機応変さ

○少々のことには動じない冷静さ

○ミスをしても引きずらない気持ちの切り替えの上手さ

○何度負けても折れにくい、柳のようにしなやかな心

○いくら負けても諦めず、勝ちを目指す闘争心

私が思いつく限りでもこれだけの好影響があります。
これらは私が囲碁を通して実際に得たものでもあります。
全て私が人生を生きていくうえで役に立つものばかりです。

囲碁を通して礼儀を覚え、脳と心を鍛えることができます。
そしてなにより、囲碁は楽しい!
一生の趣味にもなり得るゲームでもあります。

最後に、囲碁という共通の趣味を持った友人を得たこと。
それが私にとって大きな喜びです。

拙い文で長々と書いてしまい申し訳ありません。
読みにくい文を最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここに書いたことで、少しでも多くの人に囲碁に興味を持っていただければ幸いです。



大野城囲碁クラブ 席主 藤善訓




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