Mi Aire

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「自家製サフランでパエージャを」

2007-09-19 00:40:04 | エッセイ(EMPRE掲載分)

(この記事は2003年夏、EMPREに掲載されたものです。)


パエージャはスペイン・バレンシア地方の料理。最近は日本でもすっかりポピュラーになった。
平たくて浅い鍋で炊く米料理は、お米が主食の日本人にはなじみやすい料理だ。
このパエージャに欠かせないのがサフラン。ラ・マンチャ地方が主な産地の球根を育てる花で、クロッカスに似た、ひとまわり大きい紫色の花を咲かせる。
そしてこの花の雌しべを乾燥させたものが、パエージャを鮮やかな黄金色に染め、ほのかな香りを添える大切な役割をする。
この雌しべはひとつの花から3本ずつしかとれないこともあり、サフランは大変高価なスパイスなのだ。そのためにスペインでさえ家庭では普通は粉末のサフランもどきを使っているそうだ。

我が家に鉢植えの小さなオリーブの木がある。
オリーブの実はとても渋いので、そのまま食べることはできないが、花が実となり色づいて熟していく様子はスペインを思い出させて目を楽しませてくれる。
日本でも簡単に手に入るローズマリーやミントもスペイン気分を味わわせてくれる植物たちだ。
が、それに比べてサフランは、まったく売っているのを見たことがなかった。

ところが数年前の初秋のある日、デパートの屋上のガーデニング・ショップで、サフランの鉢植えを発見!すこし大きめの紫の花の蕾をつけた小さな鉢植えがたくさん並んでいる。ひとつ100円と安かったので幾つか買って帰った。
紫色の蕾が花を咲かせると、果たしてその中心に真っ赤な3本の雌しべがゆれていた。
それを途中で切れないように注意深く摘み、日向で乾燥させてみた。すると、スペインで売られているようなサフランの姿に!(本当はローストするらしい。)

すべての花が終わっても収穫できたサフランは、ほんのひとつまみだったけれど、秋も深まったある日、友人を呼んでパエージャを作った。
我が家で収穫したサフランで炊いた、黄金色のパエージャ。
それはスペインの太陽を食卓に運んできたかのように、みんなを幸せな気分にしてくれたのだった。


※今年(2007年)のオリーブ。グリーンとブラックの間はこんな色。




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