第336話 一杯の忠誠心

2010年12月30日 06時31分09秒 | Weblog

先の話で、
まず、自己の中に達成感を抱く働き方、自分の業務の中にある楽しさを見出して下さい。
と申しましたが、口で言うは易し、と思われた方もいらっしゃると思いますので、
私自身の実践について少し触れてみたいと思います。

私以後、課に新人の配属なく10年、
後輩が入ると同時に私が入れ替わり他部署へ異動となりまして○年、
最初は社の在職年数の少なさから、異動先では課内での経験年数の少なさから、
一番下(扱い)でした。
女性で新人(下)の仕事として代表的なものにお茶くみがあるかと思いますが、
このお茶くみ、私にとっては非常に奥深い業務なのです(笑)

お客様がおみえになりました。
通常はお茶ですが、時間やご年齢を見て、お茶かコーヒーか選択します。
季節やその日の天候により、熱いものか冷たいお飲み物か温度も変えます。
夏なら事前にコップを冷やし、冬場は直前に器をあたためます。
忙しい上司の為、来客の足を留めるものとならないようお茶は迅速に作ります。
お話が長引いているようです。
最初にお茶を出したのであれば、次いでコーヒーをご用意するなど、
同じ味は続かないよう変えて出します。
これらは日常茶飯事、対外的に当たり前の対応かと存じます。

腕の見せ所は、むしろ対内的な場合。
来客用の当たり前に、内だからこそできる配慮を加えます。
お茶は出す時も重要ですが、下げる時が学びのチャンスだと思っていますので、
下げる時に必ずその方の湯呑の中を見るようにしています。
何度もお茶を出していると、お茶の時は残さずお飲みになるけれど、
毎回コーヒーにあまり手をつけてらっしゃらないことがわかります。
この方はコーヒーが苦手なのだと、相手の好みというものが次第にわかってまいります。
会議で最初にお茶を出す場合、そのコーヒーの苦手な方には最初のお茶を多めに入れて出します。
雑談の中から得た情報も非常に重要です。
私は薄いお茶が好きでね~とポロっとおっしゃった人には以後、味が出過ぎる前、
他の方より早めに入れます。濃い方はその逆、十分に味が出た頃にします。
喉が渇いているだろうなと感じたら、かけつけ一杯に冷えたお茶、
その後、落ち着いて飲んでもらえるようあたたかいお茶へと温度を変えていきます。
もっと内々、よく入れて差し上げる方には、その日の体調もよみます。
大事な会議の前、眠気が覚めるようコーヒーに変えてみたり、
少しお疲れがたまっているなと思われたら、
いつもより少し多めにフレッシュや砂糖を入れて出します。(入れてというのは、
お好みを熟知し、こちらで完成品のお味をご用意して出す方の場合です)

コーヒーメーカーなどない環境で、
一度に12~15杯のコーヒーをご用意しなければならない場合、
ひとつずつ作るともちろん冷めてしまいます。すべて同時に仕上がるよう工夫します。
さらに我が社のトップは熱すぎるではないか?と思うほどお熱いのがお好きな方。
冬場の給仕室、コップからソーサー、給仕台、すべてか冷たくなっています。
どうすれば、熱いコーヒーがお出しできるのか・・・考えます。
器を温めるのは当たり前です。フレッシュと砂糖を入れますから、混ぜる時、
さらに温度が下がります。そうだ、混ぜるスプーンもあたためておけばいいんだ!
スプーンの持ち手が熱いと、びっくりなさることと思いますので、
ちょうどかき混ぜる部分までがあたたかくなるよう、
コップにお湯をはり、直前までスプーンをあたためておきます。
これで、冷たいスプーンを入れて混ぜることによる温度の低下は免れるわけです。
設備がなくとも、アイデアでなんとか乗り越えます。

受け取った側が、他の方のお茶の量を見て、
お~ お茶好きの俺には他の人より多くいれてくれているねとか、
お~今日はいつもよりクリーム多めだねなどと気づいていただけることないでしょう。
それでも、いいのです。
お茶は会議中、喉を単に潤すためだけのものではなく、
眠気を覚ます動作になりえたり、手持ち無沙汰の落ち着く場所になったりもすることでしょう。
先にお茶に口をつけないということで自身の誠意を表現するアイテムにもなりえますし。
何より私の入れたお茶でほっと一息ついていただけたなら・・・
なので、「とーまさん(私の名)の入れたお茶は美味しいね」と言われた日には、
もう嬉しくてたまりません。
「ありがとうございます。お茶を入れる時はいつもおいしくなりますようにと願をかけて入れておりますので」
入社当時からこの願かけ、一度も欠いたことはありません。
お茶くみなんて・・・と申される方もおりますでしょうが、
私にとっては、されどお茶くみ、真心尽くして取り組むべき楽しい仕事です。


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