まだ夏か素足のままで細長くブランコを漕ぐ少女を守れ
我ひとの時を数へつ思はずに娘なりし日の相槌を待つ
人混みはみな異心円生きるといふ事件の縁を擦れ違ひたり
食卓に陶皿残しひとの立つ胡蝶のゆめはつねに微笑む
海を聴かば頬に優しき熱のこと涙に似たる汗みな無言歌
胸もとに水ゆほびかに湛へつつ逢ひたしと思ふを別れと告ぐる
言ひさして魚泳がす身めぐりに流体のごと透けるいつはり
我が胸の物音聞こゆ無垢をいくつ押し花のごとしまふ静けさ
虹散らす紙から箱と透きとほる水の面に込めしうつそみ
風遠く夏を抑へてひいやりと水晶のごと空に鳴る朝
うなじより今日のさまざま流るるをその重さまたいのちと嬉しき
胸にとるは誰のつぶやきゆったりと半身(はんみ)曲げれば夕顔の咲く
小鳥来るちひさき眸(まみ)に慕はれて人なる波乱夢のごとしも
睫毛伏せガラス玉拭くさらさらと砂掬ふごと遠く逢はまし
ぬくぬくと真綿にくるむ一冊を測る手重りガラスそのまま
朝の窓を音なく揺するいくたりか姉とも見ゆる秋の風吹く
人肌はなまあたたかし薄雪の対話を伏せぬ貝は砂吐く
栞はさむ記憶はいくつ夏の肩のあらはなるまま白くなるめり
美雪乃 鳥たちや潮騒、風さやぎ、や樹木草花から聴いた声を言葉にしてうたいます。
フォロー中フォローするフォローする