パワー オブ ザ ドッグ / THE POWER OF THE DOG

 

 

シアターキノにて。

原作があるというではありませんか!

トーマス・サヴェージ著 『 パワー オブ ザ ドッグ 』。

NETFLIX 独占配信とのことで、上映期間が極端に短く、原作があることも知らず、

見逃さないようまずは急ぎ観てしまったわけなのですが、

様々な考察を促す実に深みのある映像作品であることは、原作の文学作品と同位

だと思われます。

 

撮影はニュージーランドとオーストラリアなのですが、1925年のアメリカ中西部

モンタナの大牧場が物語の舞台です。

牧場主である兄弟、フィル (  兄=ベネディクト・カンバーバッチ ) とジョージ

( 弟=ジェシー・フレモンズ ) の生活が映し出され、この初期段階ですでに ” ただ事

ではない緊張感 ” が満ちてゆきやがて・・・ という予感とともに物語が流れ出します。

広々とした空、乾燥した埃っぽい空気と風、山々が聳え、開拓された土地にぽつりと

建つ大きな木造の館、木々、草、藁、水、馬たち、そして牛たち。

兄は牧場での様々な仕事の実務面を取り仕切り、そこで働く男達を束ねる実力と、

強力なカリスマ性があります。

冒頭、背筋をピンと伸ばして大股で牧場を歩くフィルの引き締まった姿は、鑑賞者

の私達の意識に警報を鳴らすかのようです、俺に近づくな、と。

汚れたカウボーイハットと馴染みきったダンガリーシャツ、カウボーイレギングス

( これが独特なシルエットを形成しているの!バッファローの皮なのかな?

は特に!  )カウボーイブーツ、全てが自然環境と生活が合致した惚れ惚れする美しさ!

そして、事務的業務を担う弟のジョージは、黒の山高帽と黒のスーツ、真っ白な

糊のきいたカラーとシャツ黒のリボンタイ。汗とは無縁のこざっぱりした紳士式です。

ぽっちゃりと太っていて、おとなしく控えめで、兄とは対照的。

何もない田舎ののんびりとした牧畜生活を送るカウボーイの暮らしでありながら、

兄のフィルは東部の名門イェール大学を優秀な成績で卒業しているインテリジェンスで

あり、ラテン語を修め、またバンジョーの名手であり、兄弟のバンバーグ家もまた

なかなかの名家らしいことが判ってくるのですが、そのある種の文化度の高さが、映像

的な部分も含めたこの作品の感想を硬質なものにしているのでした。

 

ある時、大がかりな牛追いを終えてカウボーイ衆みなで立ち寄ったレストランで、

フィルとジョージは、店を切り盛りする未亡人・ローズ ( キルスティン・ダンスト )

と、母を手伝う一人息子・ピーター ( コディ・スミット・マクフィー )と出会います。

給仕をする繊細で色白、ひょろひょろと弱そうな息子ピーターは、マチズモに支配され

ている西部のカウボーイであるフィルの標的になります。

この出会いのシーンで不穏感マックス、ローズに惚れた弟ジョージが、兄に無断で結婚。

ローズはレストランを売り払い牧場に移り住むことになり、フィル、ジョージ、ローズ、

そしてピーター、いよいよ主役4人の不安要素しかない関係性の物語は第二段階へと

進むのですが・・・・・。

 

4人の中でも、フィルとピーター。

二人は、相反するタイプの男性として登場させられますが、とても深いところで共通

している。外見、行動、思想、全てにおいて白人男性優位主義の毒に汚染されきって

いるフィルは、実は本当の自分らしさを出すことが許されない時代と土地柄を生きて

いて、一見女性性が勝っているようなピーターには、近代医学の知識とその研究のた

に動物を殺すことに何のためらいも持たない冷酷さがある。

ある出来事が切っ掛けとなって、二人は牧場での時間を共有するようになり、そこから

前半からの、映像的な強調は敢えてされていない、鑑賞者に委ねられた数々の伏線が

不気味に効いてきます。

 

1925年のアメリカ中西部という舞台設定は、この作品の複雑なテーマ性を表現する

ための絶妙なものでしょう。これは、パワーの原理について、本当の自分を自由に解放

する生き方について、人間の内面の重層的な要素が現実を創る際にいかに働くかについ

ての、詩的で絵画的な映像と巧みな脚本で思索した、女性監督ジェーン・カンピオンの

メッセージ。現代の私達の問題とほぼ全てリンクする重要な作品と思います。

NETFLIX 配信ですから、ご自宅での鑑賞が可能です。

ぜひ、感想を語り合いたいです!

 

 

明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。

今年のゴールデンウィークって、今日5日まで? 息子は明日は登校日で授業あり。

みなさまは、明日はお仕事日でしょうか?

明日を終えると、また週末、一日頑張りましょうか!

明日も、こんがりと焼けた丸いプチパンを山盛りにして、

みなさまのご来店をお待ちしております!!

 

グラハム粉の丸いプチパン

1個 150yen

 

 

 

 

 

 

 

 

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