THE GINGER-BREAD BOY



2006年の夏のある日、何気なしに入った古本屋で、ぐるりぐるりと店内を

まわり、書棚を物色してみましたが、これといってピンとくる本がなくて、

でも、せっかく入ったのだから、なにか1冊でも、なーあいかなあー、と

さらにぐるぐるとしたところ、おやっ、これは?

茶色くなった背表紙を発見!

それが、この、『 しょうがパンぼうや 』 でした。

子供の頃から、男の子の型抜きをした生姜のクッキーなるものに、欧米文化を

感じ、憧れていたこともあり、ちょっとぼろぼろの表紙で、ちょっとシミもあった

けど、その日の その古本屋さんでの買い物を、この絵本にしました。



むかし、おじいさんとおばあさんが いました。

こどもが ひとりも いなかったので、

ふたりきりで ちいさないえに

すんでいました。


というはじまりで、

おばあさんが あるひ、しょうがパンでぼうやをつくってみようか・・・と

思いつきます。天火に入れたしょうがパンぼうやを、ほかの仕事に熱中していて

すっかり忘れ、あわてて天火にかけつけ戸を開けたとたん、焦げ付きかけたパン

ぼうやが、とびあがり逃げ出します!



「 おまちー! おまちよ、パンぼうや! 」


「 はしれ! はしれ! はしれ!

  つかまえてごらん、できるなら!

  つかまったりするもんか!

  ぼくは パンぼうや、

  パンぼうやさまだい! 」



パンぼうやの逃げ足の速いこと!! このあと、牛、馬、お百姓たち、牛飼いたち

が追いかけますが、まったく追いつけません。

有頂天のパンぼうやさまでしたが、そこに、きつねがあらわれ、

言葉巧みなきつねに、とうとう パクッ、 パクリッ、パクッ 、、、、、、

ああ、すっかり食べられてしまう!!  、、、、という、お話。

繰り返し、繰り返し、で 追っ手が増えていくところまでは絵本の定石ですが、

最後、きつねに食われるところは、大きく開けたきつねの口からパンぼうやの

頭がわずかに見えていて、けっこうな衝撃!

でもそこが、幼児心にも興奮するらしく、この絵本は、ただ今 息子もなかなかに

気に入っている1冊です。

ポール・ガルドン 作/ 1976年版、とあり、この時点では重版がまだ出ていな

いので、これが初版のようです( 初版へのこだわりはまったくありませんが )。

ポール・ガルドン氏の絵がたいへん巧みなので、このパンぼうやの小憎らしくも

あわれなキャラクターがとてもよく表現されていて、大人も楽しい作品ですね。



ですが、今の私としましては、『 しょうがパンぼうや 』 といえば、

やはり、ジミー・ヒース作の、この曲、『 GINGER BREAD BOY 』。

マイルス・デイビスの 『 MILES SMILES 』 でのこの曲の演奏が素晴らしい。

その解釈、その展開は、この時期 ( ’60年代後半 )のマイルスと俊英バンド

メンバー達による、革新的で超絶的に美しい絶品、と思う。

とても好きです。 マイルス・デイビスがどんなにクソ野郎 ( 失礼! )であっ

ても、このような作品を出されたならば、もうなんにも言えずに頭を下げるだけ。


そして、もうひとつ ・・・・というか、もうひと演奏、もしくは、もうひと録音

は、デクスター・ゴードンの 『 HOMECOMING 』 の中の、この曲です。

マイルス版とはまるっきり違う、くらくらするよなノリのいい豪快な演奏は、

デクスター・ゴードン節、とでもいう感じで、心沸き立つ感じ!!

なんてったって、掛け合う相手が、我が敬愛のウッディー・ショウですもの、

そのソロの素晴らしさは言うまでもなく。

『 HOMECOMING 』 は、活動の拠点をヨーロッパに移していたデキスター・ゴード

ンが、いよいよニューヨークに戻ってきた、その おかえりなさいライブの版で、

おやっ、時は何と、絵本と同じ1976年ですよ! 

場所は N.Y.といえば、やはり ヴィレッジヴァンガード。 

デクスター・ゴードン ( tenor sax )、ウッディー・ショウ ( trumpet、flue-

-gelhorn )、ロニー・マシュウズ ( piano )、スッタッフォード・ジェームス

( bass )、ルイス・ヘイズ ( drums )、というメンバー。

デクスター・ゴードンのサイドメンバーに二流がつくはずもないわけですが、

なかでも、ピアノのロニー・マシュウズが、とってもいいんです。

うまいっ!、もう、がんがん弾きまくっていて、いいピアノですー!!

この1曲は、必ず、ボリウム増大。ロックみたいに聴く。効きます( 何に? )。


ジャズの場合は、同じ曲での ” 聴き比べ ” というのが楽しさの1つなわけです

が、『 GINGER BREAD BOY 』 は、この2枚のほかには、作曲者本人の演奏を

ずーっと前にジャズ喫茶で聴いたのでしたが、どんな演奏だったか全く覚えていな

いです。印象薄かったのねー。

今回は、絵本版まで巻き込んでのご紹介に発展してしまいました。

” しょうがパンぼうや ” の魅力、ますます、です。











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