あっという間に読めてしまう短編集
怪笑小説
"怪笑"というだけあって、登場人物は誰も彼もちょっと怪しい
そして、くすり、にやり、と笑わせてくれる
さらに本編の最後には、作者自身による作品ごとの丁寧なあとがきがあり、その作品を書いたきっかけやその作品に対する思い入れなどが紹介されているのも、作品自体の面白さを増している
◆鬱憤電車
ラッシュ時の電車に乗り合わせた乗客たちの心の内を順に辿る
わかるなぁ・・・
私も満員電車に揺られながら、周りの人が何考えてるか想像したりするもの
私自身も、心の中で罵詈雑言を吐きながら
「思っていることが全て他人に知られちゃったら、この電車の中はどうなっちゃうだろう」なんて思うことがしばしば
誰でも同じようなことを考えるんだね
◆おっかけバアさん
ここまですごい「おっかけバアさん」なんていないでしょう
と思いつつも、最近の韓流ブームに乗っかってるオバ様や、氷川きよしに入れ込んでるオバ様達にはコレに近いものがあるかもしれないなぁ・・・・とニヤリとしてしまった
多少(←ここが問題)の犠牲を払っても、そうすることがその人の幸せならそれもアリなのかもね、と最後の1行を読んで感じた
"幸せ"に対する価値観なんて人それぞれだものね
私は人並みでいいデス、ハイ
◆一徹おやじ
星一徹ばりのお父さんが、我が子を飛雄馬のごとく育てようとするのだけれど・・・・
姉である「私」も実は超人であるあたりがさりげなく面白い
最後に「私」について、何かどかーんと来るのかな、と思っていたらそれは無かったけれど・・・・
それにしても、この作品についての「あとがき」はかなり読み応えがある
生憎私は「巨人の星」にあまり詳しくないので、イメージしかわからないのだけれど、わかる人が読んだら面白いんだろうなぁ
◆逆転同窓会
比較的"怪"が少なく、なんとなくしんみりさせられた
なんとなくわかるなぁ、こういうの
◆超たぬき理論
空を飛ぶ狸の話(!!!???)
面白いなぁ、コレ
色んな人に対する皮肉がちりばめられていて、何度もニヤニヤ笑ってしまった
◆無人島大相撲中継
これは、「怪」なんだけど、最後はちょっと悲しいお話
徳俵庄ノ介サンがどうしてそんな能力を身に付けたのか、主人公の頼みを聞いて何を考えたのか・・・・ということまで思いを馳せると、単純には笑えない
◆しかばね台分譲住宅
途中までは、「こういう話はあんまり好きじゃないなぁ、ちょっと悪ノリし過ぎ」
と思っていたけど、最後のオチでそんな考えは一気に吹き飛んだ
いや、お見事
面白い~
◆あるジーサンに線香を
これも、笑いの要素は少ない
というより、タイトルからわかる通り
『アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス著)』のモチーフにしていて
どちらかというと、最後にはちょっとホロっとさせられる
こういうのも好き
◆動物家族
私は、これが一番「怪」だなぁ、と思った
人の心がどんなふうに壊れていくのか・・・・というのをなぞっているかのような感じで、なんだかこの物語だけ、やけに現実的に思えた
先日「時をかける少女」を観たからかもしれないけど、全部読み終わって、なんとなく筒井康隆の短編集を思い出した
なんて言うのは、どちらに対しても失礼なのかもしれないけど、強烈な風刺とかやり過ぎ一歩手前のブラックな笑いとか・・・・・
気分転換したいときに向いているかも
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