山から帰って、シャワーを浴びていたら、緊急呼び出しがかかった
1ケ月ほど前から誤嚥性肺炎が良くなったり悪化したりを繰り返していて、全身状態が徐々に悪化していた患者さんの容態が急変したとの電話だった。
昨夜にも、訪問看護から状態が良くない旨の連絡はもらっていた
数年前から経口摂取不良で、週に3日、500mlの点滴を施行したり、経口補助栄養食品の接種などで栄養不良状態を何とか土俵際で食い止めていた印象の患者さんだったが、ここ10日ほどは、るい痩がより著明となり、栄養補助食品の摂取も不能となり、誤嚥性肺炎も合併されたので、点滴を連日として、その中にセフトリアキソンという抗生物質も入れていた。
最期は、急に息が止まって、顔色が急変したとのことだったので、心停止が先に来たのか、痰が詰まったりして呼吸停止が先に来たのか。
ご家族にも覚悟を促していたので、先の日曜と、祝日の本日に子供さんやお孫さんには皆合われていたそうだ。ただ、東京の息子さんが新幹線で東京に向かっているときに息を引き取られたとのことで、其れだけが少しタイミングが悪かったが、致し方なし。
今回も、訪問看護が大活躍してくれて、私の仕事は、要所で顔を見せたり指示をするだけで充分であった。その指示も、訪問看護師の「誘導」に従っている部分が大きい!最近の在宅医療は、訪問看護中心に姿を変えている。ヨーロッパ諸国では全く訪問看護中心に在宅医療は動いていて、医師の出番は少ない。
厚生労働省はそちらに向けて動こうとしているのだが、抵抗勢力がなかなかそれを許さないので、特定の業務に限定して医師の仕事を訪問看護師に許可する様少しずつ切り崩しを図っている。
抵抗勢力とは・・・・勿論、日本医師会である。
私が開業して22年、在宅医療の在り方は様変わりした。いろいろな制度が変わり、在宅医療が推進されてきた。中でも一番の変化は、訪問看護ステーションがその地位を確立してきたことだと感じている。今後も、在宅医療における訪問看護ステーションの地位は、大きなものになっていくと考えている。
訪問看護師の権限を広げ、その地位を向上させ、収入をupしないと、モチベーション上がらずも希望者も増加しないであろう。これからしばらくの間、日本の在宅医療希望者は増加し、在宅死希望者も増加することが予想されている。新型コロナの蔓延で、病院入院患者の面接制限が厳しくなって、一層、在宅で最後の時を過ごしたい方が増えている。
在宅医療を普及させるためには、医師の教育段階での在宅医療へ理解を深めることも必要だと思うが、其れよりも優先すべきは訪問看護師の権限拡張と収入upだと、私は信じている。
私の医院は、医師一人の診療所で、強化型の在宅療養支援診療所であり、在宅患者に対して24時間の対応をしている。山に遊びに行ったりしているのに、それが可能なのは、訪問看護ステーションが患者さんからの電話をまず取ってくれる(ファーストコール)からだ。
今回の場合、もし、私が山にいるときに患者さんが急変したら、どうなったか。
訪問看護師がまず駆け付けて、様子を私に伝達、救急処置が必要なら、救急車で病院に転送してもらうこともあるし、私が駆け付けるまで待てる場合は、待ってもらうことになる。今回の場合は救命処置はしないと決めていたので、たとえ私が数時間後にしか駆け付けられないとしても、待っていただくことになったと思っている。
要するに、訪問看護がしっかりしていたら、医師は殆どテレワークで済んでしまう様にいずれなる。そうなると、在宅医療が当たり前の存在になると思うし、そうならないといけないと思っている。