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Retro-gaming and so on

黒の剣

JRPGとしてはPC-9801では3本の指に入る大傑作ゲームである。3本目は知らんが(笑)。
しかし大傑作な割には知名度が低く、不遇の作品ではある。

メーカーはForestと言う会社。実はこのメーカー、エロゲメーカーとしてかつては有名だったらしい(僕は、当時はPC-9801陣営には居なかったんで、PC-9801のソフトハウスには明るくない)。
もちろんこのゲームはエロゲではない。一般向けのちゃんとしたRPGである。
言わば、

「エロゲメーカーが本気を出して一般向けのRPGを作ったらどうなるか」

を地で行った実験作である。
いや、ゲームそのものは実験作でもなんでもない。「エロゲメーカーが一般向けゲームを作る事」そのものが一種実験みたいなモノだ、と言う事であり、既にエロゲマシンである、って認識を受けていたPC-9801で「一般向けRPGを売ろう」とする事も実験みたいなモノである。
いずれにせよ、そしたらすげぇ面白いJRPGになってしまったわけだ。
エロゲで鍛えた美麗なグラフィックも良いし、黒髪ポニーテール生脚むき出しの女の子キャラが主人公のウチの一人、とか、エロゲメーカーならではの「キャラ作成のツボ」も押さえている。






明らかに、フツーなら売れて当然のゲームなんだけど、残念ながらフツーの状況じゃなかった。
このゲームが発売されたのは1995年。つまり、殆どPC-9801末期に発売されたゲームである。もう1年早かったらもっと売れてただろうが、残念ながら発売タイミングが良くなかった不遇の作品である(こういうハード末期の作品は、PC-9801に限らず不幸な扱いを受ける良作が多い)。
なお、エロゲマシンであるPC-9801の90年代のエロゲRPGのゲームデザインの主流は
  • 主人公が一人しかいない魔導物語系のライトなRPG
  • パーティ制でも多くて3人までのRPG
のどっちか、になっていた。SFCの一般的なRPGではパーティは4人組以上、って状況から鑑みると、PC-9801のエロゲRPGはゲーム性では確実に劣っている。
唯一残念なのは、黒の剣は、90年代のエロゲRPGの様式を引きずっていて、二人旅、と言うシステムになっているあたり。つまり、いわゆるFC/SFCのRPGみたいに「たくさんの仲間との出会いと冒険」と言うタイプのゲームではない。どっちかと言えば、映画で言うバディムービーの形式だな。
ただし、基本的に主人公二人ともRPG文法で言うと魔法使いである。実際は一人は剣士だが、剣術を使うとMPを消費するため、文法的には魔法使い、と考えて良い。従って、主人公二人ともターン内で複数の敵を攻撃できるので、人数の少なさはそういう意味では問題にはならないのだ。



あと、この作品に対しての良くある批判に「世界が狭すぎる」「同じ場所を行ったり来たりするだけである」と言うのがあるが、それはピントがズレてる気がする。
このゲームの場合、極めてシナリオが優秀なので、世界の広さが無くてもO.K.なのだ。そもそも設定上...設定は後述するが、その必要はない。むしろ、シナリオがダメなのに世界だけは広い、ってゲームの方が存在としては許せない。シナリオが良ければ世界の広さは必要ない、って事をむしろ証明しているゲームなんじゃないか。


さて、あらすじ、及び設定である。
呪術師シノブは、かつて人類が封印した黒竜の復活を感じ、「とある国」クライツェンにやってくる。この国は実は事実上植民地である。この国は国として統治されている、と言うより、別の大国に任命された領主が治める「領地」と言った方が正しい。つまり、ある「大国」の一地方になるのか?そういう話なので、だからこそ「世界の広さ」は関係ないのだ。従って、主人公二人組はこの「領地内」からその外へ飛び出す事がないし、シナリオ上その必要はないのだ。
さて、シノブはクライツェンを目指して船でやってくるわけだが、その船が嵐で難破し(多分、この船にもう一人の主人公、カイエスも乗ってたのだろう)、女盗賊エニスに救われる。ここから物語はスタートする。



シノブの目的は、黒竜を倒せる黒の剣を扱える剣士を探すこと。そしてクライツェンで行われてる遺跡調査を止めさせる事。遺跡調査は黒竜の復活を促す可能性があるからだ。
そしてシノブは首都バルクルーサに到着し、そこの場内で、遺跡から発見された棺に眠る、自分と似た黒髪の女性に遭遇するのだ・・・・・。




もう一人の主人公、カイエスは、剣の修行を目的に世界中を放浪していたが、クライツェンに向かう途中の船(多分シノブが乗ってたのと同じ船)は嵐に合い遭難してしまう。そしてカイエスは一人の謎の呪術師に命を救われる。
カイエスも同様にバルクルーサを目指したが、バルクルーサで賄賂目当ての衛兵に牢屋に閉じ込められ、そこから城内へと地下水道を通って脱出する。
しかし場内では異変が生じてて、衛兵等は全て眠らされるか何者かに操られていた。
元凶と思わしき「3使徒」と名乗る女性たちに遭遇するが、彼らは逃げてしまう。そして屋上で謎の黒髪の美女と出会う。



美女はカイエスに協力するように告げる。しかしシノブの式神によりそれを邪魔され、黒髪の美女はカイエスに考慮の猶予を与えどこかへと消え去る。
そしてカイエスは城で囚われていたシノブを救出、そして二人は暫くの間、パーティを結成し、黒竜の謎へ迫っていくのである・・・・・・。


とまぁ、こんな感じで話は進んでいく。
ストーリーはハッキリ言って、明るさなぞは全くない、ダークな雰囲気で進んでいく。正直言うと、「明るいRPGをプレイしたい層」には向かないだろう。しかしながら、ストーリーの練り込み度で言うとJRPGの中では殆ど最高峰の一つと言えるのではないか。オススメのJRPGである。

なお、本当の事を言うと、是非とも原作のPC-9801版でプレイして欲しいものだ。
が。
恐らく入手は難しいだろう。
従って、実はプレイステーションに移植されているので、比較的入手が簡単だろうプレイステーション版を推薦しておく。
プレイステーション版はCDブロスによる、基本的にはPC-9801版のベタ移植だが(プレステ用に使用色数は増やしてるが)、ボイス付きになっている。
ただ、こっちも不遇の作品となってしまって、それはFF VIIと同年で、かつ後に発売されてしまったことだ。プレステのRPGの「標準」がこーなる、ってのを見せた(他社にはいい迷惑だったろう・笑)FF VIIの後に発売されて、98の基本ベタ移植、と言うのはどうしても見劣りする。だから「面白さ」の割にはあまり評判にならなかったのだ。
また、今やってみるとプレステ版は、フィールド<->戦闘画面の切り替えで生じるCD読み込みのタイムラグ等が凄く気になる。ってかプレステってそういうゲーム機だったんだよなぁ。あと、ボイスのスキップが出来ない。まぁ、声優陣渾身の読み上げを是非とも聴いて欲しい、って事だったのかもしれないけど、テキスト読む方が速いのだ。セーブも当然時間がかかる。
PC-9801だとHDD対応なのでセーブもサクサク、画面切り替えもサクサク、だったトコを見るとプレステ版は色数とボイス以外は劣ってる、と思うのだ。
だから本当は98版をプレイしてもらいたいのだが、断腸の思いでプレステ版を敢えて推薦する。ぐぬぬぬ。悔しい。

プレステ版:


いずれにせよ、繰り返すが、恐らくシナリオの出来の良さから言うとJRPGの最高峰のうちの一つだろうと思う。
超オススメ、である。






余談:



個人的には戦闘のアニメーションと言うのは邪魔だ、と思うタイプなのだが、このゲームの戦闘アニメーションは美麗である。しかも種類がある。珍しく観てて楽しいのだ。
このゲームの戦闘は、基本的に攻撃と防御があるが、1ターンで複数回の攻撃が可な為、それぞれの攻撃の成功・失敗によってアニメーションが微妙に変わる。そのため、「演出」としては飽きさせないのだ。
攻撃もいわゆる「会心の一撃」が決まる場合や通常攻撃、そしてブロックされた場合、等と最低3パターンがあり、それぞれが確率で決まるし、防御を指定せずともガードが成功した場合、失敗した場合の被弾、等アニメーションがガンガン移り変わる。
勘違いしてほしくないのは、まずは、アニメーションは素晴らしいのだが、アニメーションだけを褒めているわけではない。むしろ、アニメーションの前にどういうアニメーションを表示するか、つまり戦闘の「確率による揺らぎ」がこのゲームでキチンと実装されてる事を評価したいのだ。
「定数での殴り合い」であるpoorな「夢幻の心臓」からほぼ十年、やっとRPGをキチンと理解しているメーカー(しかもエロゲの・笑)が日本でも育った、と言う事である。


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