cafe bleu

本や音楽、映画話の雑談cafe

今宵、フィッツジェラルド劇場で

2007-07-07 | 映画
CDや本でジャケ買い、装丁買いなんてことがありますが、この映画はタイトル買い。
「フィッツジェラルド劇場」、って名前によろめき、「今宵」で、何か見ておかねばならぬことがありそうだなと、劇場行きを決意するわけです。

長年続いたラジオ番組の最終回。
しかし、それはいつものように何事もないかのように。
劇場でのステージを生中継するその番組は、おそらくあたり前に空気のように多くのリスナーの生活の中に存在しているんだと思われます。

まるでリアルタイムのように淡々と映画は進んでいきます。
ちょっと冗長すぎるかなと思わせるくらいの味わい深い描写に、疲れのたまった体はとぎれとぎれ眠りに落ちたくらいです(笑)

もっともうけたのが、ダスティとレフティの下ネタジョークのきりのない歌。
ほんとにここまで引っ張るかってくらい。
おもしろかった。

こんな映画を、休日の昼間でもぼんやり眺めていたいなあと思いました。
あくせくしながら見る映画じゃないです。


by miyashu at cinema5

東京奇譚集 村上春樹 新潮社

2007-07-06 | 
村上春樹の本領発揮ですね。
これを読むと村上さんはやっぱり短編の人ではないかと思います。

心のどこかに澱のように積もっている何ものかを比喩的に表現するのではなく、現実にリアルに奇譚として表現するという構成は、まさに村上さんのための小説。

しかし、よくこんなこと考えつきますね。
村上さんのアタマの中には小さな老猿がいて、いつも何か囁いているんじゃなかろうかと勘ぐってしまいます。

久々にムラカミ節を堪能させていただきました。


by miyashu

晴れ、ときどきサバンナ 滝田明日香

2007-06-23 | 
なんでアフリカとか、インドとか、こうも人を引きつけるんでしょうね。
21才でアフリカの魅力にとりつかれ、単身でケニアに渡った滝田さん。
まあ、いろんなハプニングを経験しながら、アフリカの「生きる」力をもらってたくましくなっていきます。

実際に野生動物がそこらへんをうろうろしていく中で生活するなんて、生命の危機をもはらみつつ、どこかで体験してみたいという気持ちもあります。
よく、動物や大自然の魅力がアフリカだと思われますが、それだけとは言えない奥深さがあるようです。
でなきゃあんなリスクを冒してまでも行かないでしょうね。

もうちょっと奥深くアフリカに触れてみたくなる作品でした。

by miyashu

'80s 洋楽を聴けvol.5~魂の叫び~

2007-06-19 | 音楽
ってことで第5弾。あきもせず。

U2です。
なにをか言わんや、いやいうべくもなく。
なんですね。

もちろん'80sの金字塔と言えば「ヨシュア・トゥリー」。
果てしなく聴きました。
U2ってタイトルにひかれるものが多いです。
アルバムで言えば、「アイリッシュ・オクトーバー」「ブラッド・レッド・スカイ」。
曲名で言えば「Where The Streets Have No Name」「I Still Haven't Found What I'm Looking For」
曲を聴く前から、なんか心騒がすものがあるでしょう。
(いつも曲名やアルバム名などはカタカナ表記してますが、この2曲は英語表記じゃないと、と思ったので)

90年代に入り、「アクトン・ベイビー」「ZOOROPA」「POP」と難解を極めるデジタルな世界に入っていく訳ですが、なぜか毎回しつこくアルバム買って聴いてました。

さて、88年発表のライブアルバム、そしてライブビデオ「RATTLE AND HUM」邦題「魂の叫び」。
これがですね、史上最高にかっこいいことこの上ない。
「ヘルタースケルター」で始まるスピード感あふれる骨太のU2節はもうジェットコースター。
中でもこのシーンにやられちゃう、というのが「シルバー・アンド・ゴールド」。
反アパルトヘイトを訴える曲中、語りの場面があり、エッジの泣かせるギターをバックに、ボノが反アパルトヘイトを訴える。
このギターと語りの妙も心ゆさぶるんだけど、語りの終わりに、「OK!エッジ、メイク・ア・ブルース」と言うと、エッジのキレのいいカッティング。
まあ、よいのですなあ。
(余談ですが、このボノの語りの中で、反アパルトヘイト運動をしてたスティーヴ・ヴァンザント=ブルース・スプリングティーンのEストリートバンドのギタリストの名前が出てくるのも泣かせます。)

死ぬまでに一度は行きたいライブリストの筆頭ですね。

by miyashu

善き人のためのソナタ

2007-06-11 | 映画
最後のセリフにいろんなものが集約されます。
このセリフにじーんときて、じわーっと感極まる。
やられた、ってかんじです。

ストーリー自体にあんまり「善き人のためのソナタ」は関係ないような気がする、と思うのはひねくれた私だけの感想か?

ベルリンの壁崩壊後の場面で、「旧体制を懐かしむものもいる」というようなセリフがあって、旧体制に反発を覚えながらも依存して生きてきた人々というのも実は多数いるんじゃないかと思いました。自己矛盾を抱えながらも、体制に守られて生きてきた層というのは、自由は恐るべき荒波だったのではないでしょうか。

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'80s 洋楽を聴けvol4~トレンディドラマはスタカンで~

2007-06-06 | 音楽
スタイルカウンシル、略してスタカン。
ポール・ウェラー&ミック・タルボットの都会的なおっされーなサウンドが一世を風靡したんですよ。
ジャジーで、ファンキーでソウルフルな、とにかく雰囲気ばっちり、これ1枚でなんでもいけるぜ的「カフェ・ブリュ」は、かっこつけさんの必須アイテム。
ポール・ウェラーのファルセットにぞくぞくっ、と鳥肌立たせたお方も多かったことでしょう。カラオケで歌えないって(笑)

スタイルカウンシルなんて知らないってあなたも実はよく聞いてるんです。
'80sといえば、そう、あなた、トレンディドラマですよ。
キーワードは、おしゃれな勘違い。
このころ、もういろんなドラマでBGMに使われまくり。
これでもかってくらいかかってました。

だんだんとポップ&ロック色が強くなっていって、それはそれでとってもよかったです。
特にライブアルバム「ホーム・アンド・アブロード」は気に入ってました。
83年結成、90年解散とまさに80年代を駆け抜けたバンドでした。

(写真は「カフェ・ブリュ」(右)と「アワ・フェイバリット・ショップ」(左)です。おっされーなジャケットがマックの白いキーボードに映えるでしょ・笑)

by miyashu

GOAL!2

2007-06-02 | 映画
さて、「GOAL!2」を見るぞ、とT-JOY。
何をうっかりしてたか、何故に吹替えしかないのか、この時間。
今さらもうどうしようもなく、吹替えです。

第2作はレアル・マドリードへ移籍。
サンティアゴはスーパーサブとして、脚光を浴びるも、レギューラー獲り目前にして、あれやこれやそれやなんやあって、堕ちてゆく。
マスコミにもてはやされ、贅沢な生活。少しずつ心のタガが外れてゆく。病院で働く彼女との心のズレ。
そこらへんの機微もうまく描かれます。

でも、なんかあのスター生活って、とってもステレオタイプなんですけど。
本当に超ビッグクラブの選手はこういう生活なんだろうか。
これじゃ堕落しちゃうよ。

ストーリー全般も、細かな描写もほぼ想定の範囲内ってかんじで、意外性がなかった。

でもサッカーの映像は楽しい。
ベッカムだ、ジダンだ、ラウールだ、ロベカルだ、ロナウドだ・・・ってよりももっとスタジアムの観衆の迫力を描き込んでもよかったかな。

スーパーゴールが続々、続々。
やっぱ、見所はここですね。

トリニータにもゴールをくれえ!

by miyashu

東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~

2007-05-28 | 映画
いまさらなんですが、映画・東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~を見ました。

オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、小林薫。
やっぱりすごい役者さんたちです。
あの原作からこういう脚本、構成。これもよくできています。
何もかもとてもよくできた映画。
あのちょっと冗長な原作をここまでドラマティックに仕立て、魅せる役者さんたちが見事に演じている。

でも、泣けないんだなあ。なぜか。
あまりにすべてできすぎているからでしょうか。

実はちょっと不満なんです。
あの原作でいちばん好きなのは、おかんが上京してしてきてからの場面。
いつのまにやらみんなのたまり場となり、おかんがうまい料理を振る舞う。
ボクの友達がおかんの友達になり、とてもあったかい場面が交流が描かれる。

この大好きなシーンがどうもさらっとしすぎている。
しかも彼女は松たか子。
きれいすぎ、存在感ありすぎ。

ということで、あまりにできすぎていて泣けなかったなあというのが感想です。
さらに輪をかけてエンドロールの主題歌が福山雅治ってのもやりすぎ(笑)

おかんの料理のシーンももっとふんだんにあったほうがよかったな。

by miyashu at cineflex on 5.25

'80s 洋楽を聴けvol3~ブルータートルはパリの古城で~

2007-05-17 | 音楽
パリの古城でバンドが生まれた。
石造りの雰囲気ある古城に機材を持ち込んでセッションするミュージシャンたち。
そんなかっこいいビデオがあるんです。

スティング 、オマー・ハキム 、ダリル・ジョーンズ 、ケニー・カークランド 、ブランフォード・マルサリス らのインタビューを挟みながら、バンドが熟成していく様子を描いた作品。
「ブルータートルの夢」とアルバム名と同名のこのビデオは「A BAND IS BORN/BRING ON THE NIGHT」というのが原題です。

バンドの結成、古城でのセッション、ツアーのはじまりというストーリーに、インタビューやスティングの素顔がちりばめられているんですが、もうこの古城でのセッションがかっこいいことこのうえない。
これを見ずしてスティングは語れない、ってくらいのもんです。

ブルータートル以降、いろんなミュージシャンといろんなバンドを組んで、それはそれでそれぞれかっこいいんですが、やはりこのブルータートルのバンドは格別の思い入れがありますね。

ベストヒットUSA世代の'80sファンとしては、「ラシアンズ」や「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」のビデオクリップが印象深いですね。
「バーボンストリートの月」なんて渋さの極みもいいですね。

スティングのツアーには2回行きました。
1回目が2000年10月21日福岡マリンメッセのブランニューデイツアー。
2回目が2005年1月16日広島サンプラザのSacred Love world Tour。

ツアーごとにバンドのカラーも変わり、サウンドもがらっと違ったりするのですが、やはりスティングはスティング。
あのヴォーカルの威力に圧倒されます。
バンドのかっこよさもはんぱじゃない。

ウワサのポリス再結成ワールドツアーなんてものが心底待ち遠しいのですね。

話はいつのまにか、ポリスに戻りますが、ポリスというバンドはある意味スチュワート・コープランドのバンドだと思います。
彼のドラムなしではポリスはない。バンドの色をもっとも反映しているのが彼のドラムワークではないかと。
もちろん、アンディ・サマーズのギターもスティングもトライアングルの一角をなしポリスサウンドが生まれるのですが。
私個人的な印象ではそんな思いがあります。

ってことで、第3回目はスティングでした。


by miyashu

'80s 洋楽を聴けvol2~春風にHigher Love~

2007-05-14 | 音楽
就職に失敗して、さらになんと大学の卒業にまで失敗してしまった弥生三月。
茫然自失なすすべもなく(ってほどには本当はなかったんだけど)、大学の懐近くの学生アパートを出た。
バイトに都合の良い大学から離れたアパートに引っ越すのだ。
前半の半年は取る単位もないので、休学し、後半の半年で再び大学生に戻る。
バイトで月10~15万の収入があったので、とりあえずはなんとかなる。

引っ越したばかりのアパートに早速オーディオをセットする。
テーブルとオーディオ機器だけとりあえずしつらえて、窓から入ってくる暖かい春風に吹かれる。
このときの空気感がなんだか今でも懐かしい。
状況的には情けない立場なんだけど、そんな切羽詰まったものでもない。
とりあえずモラトリアム延長戦。

そのときずっとかけっぱなしだったのが、スティーヴ・ウインウッドのアルバム「バック・イン・ザ・ハイ・ライフ」だった。
「ハイヤー・ラブ」や「バック・イン・ザ・ハイ・ライフ・アゲイン」(このタイトル、すごく好きです)がぐるぐるぐるぐる頭の中を回っていた。
中古CD屋さんで払い下げを買ったのでもちろんリアルタムではない(ここ大事、ね。ちなみにアルバムは1986年リリース)

だから私にとってスティーヴ・ウインウッドといえばこのアルバムであり、あのときのゆるゆるとした何とも言えない春風の空気感なのだなあ。

できることならこの1年をもいっかい過ごしてみたいものだ。

Steve Winwood/Back in the High life

オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える 木村元彦 集英社インターナショナル

2007-05-13 | 
今更ながらですが。

たかがサッカーじゃないか。
この1冊を読み終えたとき、ひとことでくくればそうなる。
たかがサッカーに熱狂していられる生活、あるいは選手としてサッカーにかけていられる人生。
それは幸せなものだ。

オシムの発言もさまざまに解釈されるが、自由にものも言えず、また一言に負う責任が途方もなく大きな状況を生きてきた彼のひとつの処世術なのだろう。
含蓄のあるオシムの言葉は、彼の激動の人生があってのものである。

とうとうトリニータはオシムのジェフからは1勝もできなかったなあ。

by miyashu

村上春樹はくせになる 清水良典 朝日新書

2007-05-13 | 
久しぶりにハルキワールドの変遷を復習することができました。
「アンダーグラウンド」「約束された場所で」という膨大な時間とテーマを携えた著書がキーポイントですね。
村上さんの内部でこれらの出来事が消化さていった結果が、その後の作品の方向性を決定づけたというのが、よくわかります。

正直「スプートニクの恋人」や「アフターダーク」の読み方がわからず、もう村上さんは自分の中から乖離しつつあるのかと思っていましたが、この本で、ちょっと見方が変わったような気がします。

書名どおり「村上春樹はくせになる」のが再認識できた一冊です。
ハルキ本を読むと、もう脳内はすっかり感染していて、ちょっとしたタイミングで「悪くない」などとつぶやく自分がいます。やれやれ。

by miyashu

'80s 洋楽を聴け~ボスは闇に吠える~

2007-05-08 | 音楽
さてちょっと気まぐれに、80年代洋楽でも語ってみましょう。
80年代、もっとも熱狂したアーティストの一人。
はい、わかる方はもうタイトルでわかりますね。
ブルース・スプリングスティーンです。
「明日なき暴走」「ザ・リバー」がマイベストです。
ボスのしゃがれごえが、背筋をぞくぞくさせます。
クラレンス・クレモンスのサックス、スティーヴ・ヴァン・ザントのギターなんてこの期のEストリートバンドも荒くれたかんじでとてもいい。
「明日なき暴走」のジャケットなんて最高ですよ。

そしてやはりスプリングスティーンといえば、なんと言っても4時間を超えるというライブ。
ボスのライブはCDでもビデオでも海賊版出まくりなので、ちょっとした中古CD屋さんに行けば続々お宝が出てきます。
画質なんてあったもんじゃないビデオを買ってそれでもわくわしながら見てたりしました。

「ボーン・イン・ザ・USA」以降はなんかあんまり心に迫るモノがなくなってきました。
惰性でCDは買い続けてはいますが、かつての輝きは自分には感じられません。

「22才の別れ」Lycoris 葉見ず花見ず物語

2007-05-03 | 映画
何か肌触りが違うぞ。
画面も傾いてるし(笑)

心地悪さを感じる序盤。
いったい何を表現したいんだ。
九州が舞台だけど、これじゃ臼杵や津久見を使う理由がない。
ただ3部作にしたいってだけで臼杵や津久見を使ってるのか。

と、まあ劇場公開を見に行ったことを後悔までし始めた頃、
葉子が登場するあたりから、ちょっと色合いが変わってきます。

世代的にもよくわかる。
もしかしたら、若い世代の人には泣ける映画ではないかもしれない。
わざとらしい偶然もだんだん気にならなくなり、深みにはまっていきます。

新人の花鈴役、葉子役の2人がとてもいい。
この映画の空気にぴたっとはまっている。

あと一歩前に進んでいたら、
あのとき、傷つくのを怖れて引いてなかったら、
誰もがそんな思いを抱えて生きてきたはず。
そんな思いを顧みさせてくれる。

「22才の別れ」のフレーズが繰り返し繰り返し頭の中を巡る。

こりゃ、泣けますよ。

見慣れた臼杵の風景もきれいです。
雪子の家の前にクルマをとめるなんて、小ネタもうれしい。

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ユメ十夜

2007-04-09 | 映画
まずは、漱石さんの「夢十夜」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html

これってはるか昔、大学時代に読んだんだけど、第三夜と第六夜が印象に残っている。
こういうオムニバスに求めるのは、原作のテイストを持ちながら、いかに原作を裏切るか。

たとえば第三夜は原作のイメージに近く、意外性がない。
第五夜はオリジナリティ、発想の妙はあるけど、「夢十夜」じゃない。
なかなか難しいものだと思う。
第一夜は話も役者も映画の雰囲気も期待させるだけに十分なもので、さあどうなるどうなると期待を引きずるが、そのまま期待をはずしてしまう。
まだ何かあるだろ、って(笑)

その中で、第六夜。
もうこれ、いい。
何も言うことはない。
これぞ、「ユメ十夜」と語るにふさわしい。

第七夜はなんとも。自分の範疇じゃないので。
第十夜は第六夜についで、二番目に好き。

第四夜、第九夜のようなのも好きです。
これはあまりいじらず、このままがいいと思う。
緒川たまきがいい。

10編ものオムニバスともなると全体のトーンや気になるところだけど、
いいバランスだと思います。
「夢」という理不尽で異形の世界をほどよく不可解にほどよく甘美に描いた
漱石じゃなくてソーセキさんの「ユメ十夜」。
一見の価値あり。

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