宮崎市郡医師会病院 病理診断科 部長 浅田 祐士郎
(2022-5-15)
2022年3月に宮崎大学医学部を退任し、4月1日に病理診断科部長を拝命しました浅田祐士郎と申します。医師会の先生方には、宮崎医科大学・宮崎大学の病理学講座・病理診断科のときよりご高配とご支援をいただいてまいりました。
私は大阪の出身で、1982年に宮崎医科大学を卒業(3期生)しました。臨床実習で病理診断学に興味を持ち、臨床に進む前ステップのつもりで住吉昭信教授(元宮崎大学長)の病理学第一講座に大学院生として入局しました。当時は病理解剖が多く、毎週数件のCPC(臨床病理検討会)が行われており、大学院生でしたが研究よりも病理診断に大半の時間を費やし、人体病理の研鑽を積みました。学位研究では、教室のテーマである「動脈硬化と血栓症」について、林透先生(現 さがら病院宮崎病理診断科)の指導の下、血小板と動脈硬化発生について実験病理の研究を行い、博士号を取得しました。その後は病理学第一講座のスタッフとなり、一年間の米国留学を含めて、病理診断と心血管病理の研究に専念してきました。2000年に住吉教授の後任として教授に就任しました。就任後は、大学統合、国立大学法人化、その後の大学改革など慌ただしい時期が続きましたが、病理医を志す若手医師と循環器内科・外科・放射線科などからの多くの大学院生と一緒に循環器疾患を中心とした臨床病理研究を進めることができ、また抗血栓薬の開発にも携わってきました。この間、当院心臓病センターの先生方とは多くの共同研究をさせていただきました。宮崎大学大学院には夜間履修制度があり、当院の医師2名が院生として博士号を取得されています。在職期間の後半では医学部副学部長(研究担当)、評議員や大学院研究科長などを兼務し、学外では大学評価機構や医療安全調査機構の委員を担当し、講座や病理以外の仕事が多くなりましたが、講座スタッフや関係する方々のご支援により無事退任を迎えることができました。また宮崎市で日本動脈硬化学会教育フォーラム、日本血栓止血学会学術集会を主催した際に、医師会の先生方から多くのご支援をいただきました。
病理診断科の業務としては、生検診断、摘出臓器・組織を対象とする組織診断、手術中の迅速診断、細胞診断、病理解剖があります。病理組織診断はH-E染色、特殊染色、免疫染色で行いますが、免疫染色が必要とされる疾患がかなり多くなっています。また近年では患者さんごとに適切な治療を提供するため、薬剤の標的となるタンパク質や遺伝子などを調べるコンパニオン診断、遺伝子パネル検査が普及しており、病理検体の取り扱いがより重要となっています。病理解剖については、全国的に解剖数が減少していますが、死因の究明・疾病の病態解明・治療効果の検証などにおける病理解剖の重要性は変わっておらず、医師臨床研修制度においてCPC研修(CPCへの症例呈示とレポート提出)が必修とされています。
これらの業務を病理専門医・研修指導医1名、臨床検査技師6名(細胞検査士5名)、宮崎大学病院等からの非常勤病理専門医・細胞診専門医で行っていますが、必要に応じて大学をはじめ県内外の病理診断施設と連携を取りながら、先生方からのニーズにお応えできるように進めていく所存です。今後とも病理診断科へのご指導、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。