トトラの馬

元々はエコロジーやスローライフについて書いていましたが、とりとめなくなってきた。

念願の一冊 「鼻行類」

2006-09-02 03:26:03 | 読書
以前から欲しい欲しいと思っていた一冊を入手、一気に読み終えました。

「鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活」
ハラルト・シュテュンプケ著 平凡社

南海のハイアイアイ群島で見つかったという、独自の進化を遂げた哺乳類に関する論文形式の本です。
わたしが鼻行類を初めて知ったのはいつだったかすでに記憶にありませんが、絶版で入手できませんでした。
昨年5月に出版社を変えて発売されていたのも、まったく知りませんでした。
ところが、先日ぶらりと本屋に入ってたまたま通りかかった「手元に置いておきたい名作」というコーナーに、芥川龍之介やらヘミングウェイやらに混じって並んでいるのを見つけ、大喜びで持ち帰ったのでした。

さて、この鼻行類。和名はハナアルキ。
鼻行類という名が表すとおり、鼻が複雑な機能を担うまでに進化し、鼻で歩いたり跳んだり捕食に用いたりする奇妙な生物たちが生物学的に分類され、学名、生態、行動パターン、身体構造、組成構造などが図と共に詳細に記載されています。
さらには、観察にとどまらず系統進化にも触れており、地中にトンネルを掘って暮らすコビトハナアルキに関する記述には、プラナリアなどの仲間がこの種を祖先とするという学説も紹介されており、生物の進化についての想像を掻き立てられます。

バリエーションに富むさまざまな鼻を持つハナアルキの中には、鼻汁を水面にたらして引っかかった獲物を食べるものや、耳で羽ばたき後ろ向きに空を飛ぶもの、鼻で身体を支えて花に擬態し一生その場を動かないものまでいるんです。
多鼻類に分類される仲間は、複数の鼻を持つのが特徴。
一番有名な鼻行類は、きっと長く強く発達した4本の足で逆さま立ちになって歩くナゾベームたちでしょう。

1941年まで発見されていなかった南の島々に、こうしたハナアルキたちが暮らすさまを思い浮かべると、ついつい笑みがこぼれます。
しかし残念ながら、ハイアイアイ群島は1957年に核実験によって水没し、今ではその研究の成果はこの本しか残されていないのです。

1961年にドイツで発売されて以来、フランス、日本でもさまざまな検討や議論を巻き起こしたというこの書。
学術的な正誤は、検索すれば答えはすぐに見つかると思います。
でも、幻想的な詩から始まり、鼻行類の発見と研究によって明かされる豊かな生命の営み、そして島々の消滅で終わる一連の物語を楽しむことこそ、この本の最高の味わい方かなと思います。

鼻行類のフィギュアや模型を作っている方たちのサイトを見つけました。
なにせ、研究半ばで絶滅した動物達ですから、標本も写真も残ってないですからね!

ときわたけしの@鼻行類(ハラルトの歩く鼻♪)

作ったものの記録