雑木帖

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新聞・テレビの報道では世の中のことはわからなくなっている

2006-07-17 04:58:44 | 政治/社会
 最近ますますその感を深くしている。
「議題設定機能」。これは踊る新聞屋さんの言葉だが、世の中がその時々に話題にするもの、考えるものをメディアが設定する機能のことをいうのだと思う。
 これは、今のところ、依然として次のものと同意であるような気もしている。
「多くの人々にとって、メディアに取り上げられない事象は、存在していないことと同じである。現実にわれわれが見聞きできるもの、逆にわれわれが見聞きできないものも含め、すべては、マスコミの世界をコントロールする者たちによって決定されているのだ」
(『創られる現実~ニュース・メディアの政治』マイケル・パレンティ著より)
 インターネットの普及で、その議題設定機能が新聞・テレビなどの専有事項でなくなったのだろうか。あるいはこれからその可能性は高くなるのだろうか。
 けれどそのためには、僕にはネットには超えるのがむずかしい高いハードルがあるように思う。それは「一次情報」の収得である。
「議題設定機能」というのが社会性をおびたものである以上、それは何らかの事実が前提になっていなければならない。現実の出来事とは離れ、観念的抽象的な議題を提示しても、それは身近なサークルのようなものでなら議題たり得るかもしれないが、世の中の多くの人が議題として考えるようなものにはあまりなり得ない。どうしても「事実」=「一次情報」の提示が必要であるように思う。

 安部晋三官房長官が統一教会系の大会に祝電を送ったという事件は、「議題設定機能」はたしかにネットにあった。しかし、それは韓国の統一教会がネットで配信していたくだんの大会の映像があったからだ。つまり、ネットに最初に一次情報が存在した。

 ネットほど一次情報が得やすい場はない、という考え方もあるかもしれない。何故なら、ブログなりホームページなりで、当事者や関係者が書けば、それは究極の一次情報で、新聞・テレビ・雑誌などの様々なフィルターを通さない「事実そのもの」でもあると。でも、ネットでそういうことが書ける人がどれだけいるのだろうか。
 問題を提示するにはまず法律の問題をクリアしなければならない。問題というくらいだから、おおやけになれば「不利益」をこうむる団体なり個人なりがいるのが普通で、現在の法体系では、法的にそう簡単にネットで提示できるようにはなっていないのだ。
 次に当事者に作業をする時間的な余裕もなければならない。一般の勤め人というのは、ニュースを一通り読む時間ですらやっと、というのが実情なのではないだろうか。ネットで提示するとなれば、多大な時間と気力、体力が必要だ。
 次の問題もある。
 仮に議題にするに足る事実を誰かがネットで書いたとして、それを誰が多くの人々に告げ知らせる──情報提供ができるだろうか。すでに、新聞・テレビなどによって議題設定がおこなわれている事案なら、検索などによって多くの人が知るところともなるかもしれない。しかし、今言っているのは、まだ多くの人が何も知らないものなのだ。もちろんだから検索などもおこなわれないものなのだ。

 以上は議題設定機能だが、議題そのものの提示にすら、つまり基礎事実の提示すら、もう大メディアは信用がおけないような気がしている。今更ながら、といえなくもないが。
 ただ、こちらはネットの力が発揮できる領分ではあるかもしれない。

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7 コメント

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現場の人間です (harayosi-2)
2006-07-17 20:37:23
 守秘義務などという制約を課せられてはいますが、現場での問題意識をもとに、小さな学習会・研究会などでの討議・議論を通じて、その中で確認できたと思うことを発信しています。
日本は今曲がりかど (雑木帖@管理人)
2006-07-17 22:29:03
「社会保障と新自由主義」はとても参考になります。議題設定機能から言えば、今まさに日本はこの「社会保障と新自由主義」というような議題で議論をしなければならないときにあります。しかし、「格差」などが問題にはなっても(これとて最近ようやく、といったものです)、こういう大本の議論が起こりません。なぜかと考えたとき、僕は大メディアの問題が大きいというふうに思えます。



今日の朝日新聞の記事に次のようなものがありました。



衰弱知りながら給水停止・保護申請却下 障害者が孤独死

朝日新聞 2006年07月17日

http://www.asahi.com/national/update/0716/SEB200607160041.html



この記事を読む限り、本質的なものは見えてきません。

でもたとえば、『週刊東洋経済』の7月1日号の”知らずに住んでいる あなたの「街」の格差”という特集の「生活保護」という項目では、この北九州市の一つの事例が単なる偶然的な、また単なる個別のケースなのではなく、政治政策的な、しかもこれから日本が向かう世界の一端を垣間見せているものであるということを示唆しています。



≪実は北九州市の生活保護行政は、わが国のモデルになりつつある。今年3月、厚生労働省は生活保護の「適正運営」を進めるための「手引き」を作成した。そこでは隠れ収入をあぶり出すための「関係先調査の徹底」や「稼働能力のある者に対する指導指示」など、「すでに北九州市では20年前に導入済みの施策」(同市福祉関係者)が数多く盛り込まれている。こうした施策が全国に広がった場合、ほかの自治体でも北九州市と同様の問題が起こるおそれがある≫(”知らずに住んでいる あなたの「街」の格差”より)



北九州市の問題というのは、次の同記事のイメージにあるように、上記の朝日新聞の記事のような例が多発しているということであり、しかもそれは北九州市がとる政策による必然的な帰着であるというものです。



「北九州市では餓死や変死が相次いでいる」(『週刊東洋経済』”知らずに住んでいる あなたの「街」の格差”より)

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/a5/1805130d9a6ae71232090a57dee9ab52.jpg



「長期不況の中で、北九州市は大都市で唯一、保護率を低下させた」(同)

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/ba/7b681d174553e67f08d35070b3f609f5.jpg



ちなみに、こういう憲法25条にも関わってくる問題から派生してくると思われる社会の不安要素を、力でねじ伏せるという方法で治安の維持をめざそうという動きがあるようで、今の政府が目論む「共謀罪」の導入にもそれはつながってくるようでもあります。

Unknown (ゆりかりん)
2006-07-17 23:32:11
どうなんでしょう?

例えば、企業がこれまでになかったような画期的新製品を開発しても、市場がその製品を受け入れるまでに至っていない未成熟な市場だった場合、その新製品の市場導入は見送られる・・・ということはよくあります。(その新製品の価値が理解出来ない人々に対しての市場成熟化啓蒙は勿論ですが、「それによって現在の生活が如何に変わるのか?」が大きなキーポイントになります)

或いは、グローバルスタンダードの確立が、何らかの社会的諸事情によって遅れてしまった場合も然りです。(この場合は、対企業同士、或いは国家同士の利潤占有率のドロドロ閉じた駆け引きです)

ただ、新製品が、ベストなタイミングでベストな手法によって、世の中に齎された時には、市場は革命的に一変し、途轍もない速さで市場を占有するものです。

しかしながら、そのタイミングや手法がベストどころか、的を得ていなかった場合には、如何なる先進的技術も市場から見向きもされず、二度と振り向いてもらえない製品と化すだけです。

(ライフスパンは違っても)情報も商品と同様、生ものだと考えます。したがって、ブログが今のマスメディアの変わるエポックな情報源に変わることを心から望みますが、そのためのインフラはまだまだ確立できているとは言えない状況だと思っています。今しばらく、その整備に向けた努力が必要なのが一点と、ブログがまだ極限られた人々の趣味・・・というレベルを脱していない点が一点。これがある程度解決できれば、誰も新聞なんて買わない時代がやって来ると思います。(ナベツネよ、さらば・・・w)
自動車 (雑木帖@管理人)
2006-07-18 22:04:49
ふと「フロッピーディスク(FD)」のことを思い出しました。

開発された当初、このFDは日本のメーカーに悉く相手にされなかったというエピソードがあります。(結局採用したのはアメリカのIBMでした)

現在は「ハードディスク(HD)」全盛ですが、このHDはFDの単なる進化形であり、FDこそコンピュータにとっての革新的な商品でした。

しかし、なんといっても、功罪ともに最大の商品といえば「自動車」でしょう。

自動車は医療や治安、産業の物流面で、欠くことのできない存在ではありますが、たとえば、子供の問題一つとっても、そこに道路の主役は自動車であり、それが街を形作り子供の遊び場所も限られてきた、という問題が存在しているように思います。子供の問題に限らず、自動車は文化の深いところを変えてきたという感があります。

マイケル パレンティの言葉を紹介させていただきました (harayosi-2)
2006-08-05 15:58:53
マイケル パレンティの言葉を、紹介させていただきましたので、TBさせていただきます。
harayosi-2さんへ (雑木帖@管理人)
2006-08-07 23:35:56
TBありがとうございます。



森田実氏が4日前に次の記事を書きました。



「景気回復の大合唱」の危うさ (森田実の言わねばならぬ  2006/08/03)

http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C02807.HTML



その前日に新聞も次の記事のような良いものも書いているのですが、その朝日新聞も含め新聞総体としてみれば、森田氏の言っていることは正しいように思います。



検証・構造改革 ”あいまい「小さな政府」” 朝日新聞 2006/08/02

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/57/624d115f396e0d1cc573d354237ed86e.jpg



また、改めて昨年の衆院総選挙前のアンケート調査を見ると、有権者が小泉構造改革の郵政民営化に賛成した理由は、新聞・テレビが宣伝した理由そのままであることがわかります。宣伝文句ではなく、小泉構造改革とはそもそもなんぞや?という基礎事実の部分を、新聞・テレビは報じるのを避けてきたという経緯からいけば、無理からぬ面もあります。



「衆院選の争点に関するアンケート」 (gooリサーチ 共同調査結果)

毎日新聞 2005年8月23日~27日 特集「'05衆院選・日本の選択」

gooリサーチと毎日新聞社による共同企画調査<第3弾>

http://research.goo.ne.jp/Result/000178/



この共同調査のレポートは、



≪自民党はさらに「郵政民営化なくして小さな政府なし」を旗印に、郵政民営化が「社会保障の充実」「戦略的外交の推進」にもつながる「この国の問題を解決する唯一の道」と訴える。ただ、なぜそこまで効果があるか説明は尽くされていない。さらに「郵政民営化は改革の本丸」と言いながら、改革の全体像も不明確だ≫



という一節など、なかなか読ませるものがあります。



ところで、次の論評などもおもしろいと思います。



「競争理論は検証可能か」ジャック・サピール(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2006年7月号)

http://www.diplo.jp/articles06/0607.html

TBありがとうございます (harayosi-2)
2006-08-08 06:04:34
TBありがとうございます。

紹介の記事、読ませていただきました。

朝日の記事は、私も切り抜いて保存しています。

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