部長ブログ@箕面市役所

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フタをできない「世界のトイレ問題」

2019年11月20日 | 上下水道局

皆さま、こんにちは。上下水道局長の小野啓輔です。

11月は、トイレの日が2つあります。

ひとつは11月10日「トイレの日」で、11(イイ)10(トイレ)の日という語呂合わせから、日本トイレ協会が、1986年(昭和61)年に制定しました。

日本トイレ協会は、トイレ文化の創造と環境改善を進める団体で、建築家、デザイナー、医師や研究者、行政機関、トイレ関連企業など、様々な立場・職業の人が、より良いトイレをめざして、調査・研究やシンポジウムの開催、公共トイレの向上や災害用トイレ開発などに取り組んでおられます。

もうひとつが11月19日「世界トイレの日(World Toilet Day)」で、世界的な公衆衛生運動に取り組む団体「世界トイレ機関」(WTO:World Toilet Organization)の設立日にちなんで、国連が2013年(平成25年)に制定しました。

トイレにまつわるタブーを打破し、下水処理や野外排泄(はいせつ)の根絶など、世界で起こっている様々なトイレの問題を多くの人に知ってもらい、公衆衛生への関心を高め、問題解決に向けた国際社会の取り組みを加速していくための日とされています。
トイレ問題を世界のみんなで考え、少しでも改善していくために、世界各地で多彩な催しが開催されています。

人が一生の間にトイレを使う回数は、約20万回と言われています(数えたことはないけど・・・・)。

日本にいると、ほとんどの人が「トイレがあるのは当たり前」と思っていますが、 世界ではいまだ、トイレを使えない人が約20億人もいる現実があります。

トイレは生きるために欠かせない大切なもの。
トイレの日が2つもある11月にちなんで、 世界のトイレ問題について、あらためて考えてみませんか。

今回は、下水道とも関係の深い「世界のトイレ」がテーマです。

 

●トイレがあるのは、当たり前?

日本では、トイレで用を足すのは、当たり前のことです。
各家庭に個室のトイレがあり、多くの地域で水洗化されています。
また、コンビニや飲食店、駅や公園、公共施設、商業施設など、どこに行っても清潔なトイレを使うことができます。

トイレに入ってドアのカギを閉め、安心して排泄できます。
排泄後は、レバーひとつで水を流し、排泄物はすぐに流れて消えてしまいます。
そして私たちは、流したもののことを忘れます。

しかし世界では、どうでしょうか?

今年6月に、ユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)の「水と衛生に関する最新報告書」が発表されました。
それによると、今なお、世界人口の26パーセントにあたる約20億人が、排泄物を衛生的に管理・処理できる基本的なトイレを使用できていません。

人が生きていく上で基本的な最低限の状態すら確保されずに生活している人が、世界にはまだまだ大勢おられるのです。

この現状を改善し、「2030年までに、だれもが安全な水とトイレを利用できるようにし、自分たちでずっと管理していけるように、世界中で力を合わせて具体的な取り組みを実現しよう」というのが、持続可能な開発目標「SDGs (エス・ディー・ジーズ)」の「ゴール6」です。

私の以前のブログ『SDGs と ラッピングトレイン ~ 「安全な水とトイレ」を世界中に』では、主に「水」に関する世界の現状を取り上げました。

今回は、「トイレ」に関する世界の現状を、もう少し整理してみます。

      

●世界では、いまだ約20億人が、基本的なトイレを使用できていません。

「基本的なトイレ」というのは、人間が排泄物と接触しない設計で、他の世帯と共有していないトイレです。

基本的なトイレを使える人たちの割合は、2000年には世界人口の56パーセントでしたが、この間に少しずつ増加し、2017年時点では74パーセントにまで向上しました。

しかし今なお、26パーセント=約20億人が、「基本的なトイレ」を使用できていません。

例えば、地面に穴が開いているだけのトイレ、足場のないトイレ、バケツやビニール袋に排泄し外に捨てる方式のもの、池や川の上に設置され排泄物がそのまま落ちるトイレなどもあります。
排泄物が適切に処理されず、ハエが発生して病原菌が蔓延してしまうなど、生活環境が極めて不衛生となっているトイレも多いです。
さらに、地域で共有のトイレや仕切りのないトイレしかなく、プライバシーが確保できない排泄環境におかれている人々もいます。 トイレのある地域も、ない地域も、その環境は様々です。

そこでSDGsでは、より高い新しい目標として、「安全に管理されたトイレ」を掲げました。 その定義は、次のとおりです。

「安全に管理されたトイレ」 =排泄物が他と接触しないように分けられ、安全で衛生的に処理できる設備を備えており、他の世帯と共有していない、改善された衛生施設。

この新しい目標に照らしてみると、「安全に管理されたトイレ」を確保できている人は、世界人口の45パーセントしかいないことが明確となりました。
残り55パーセントの人々の安全なトイレ環境を確保していくことが、SDGsの大きな目標です。


● 6億7,300万人が野外で排泄を行っています。

トイレを使えない人々のうち、とりわけ深刻なのが、道ばたや草むら、物陰、川などで用を足さざるを得ない「野外排泄」の状況です。
2017年の時点で、世界人口の9パーセント、約6億7,300万人が、野外排泄を続けています。

野外排泄によって、排泄物はそのまま放置され、病原菌が人の手やハエなどの虫、さらには川、地面などを介して人の口に入り、下痢やかぜなどの病気を引き起こします。
また、野外排泄が、さらに水源を汚染し、清潔な水を手に入れることがますます難しくなり、病気の蔓延や、慢性的な栄養不良などの悪循環が加速します。

このためSDGsでは、2030年までに「全ての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。」と明言しています。


●1日に800人以上の子どもたちが下痢性疾患で亡くなっています。

トイレがないところでは、病原菌が様々な所から体内に侵入します。
経済情勢や紛争、インフラの不備などにより、不衛生な水やトイレ、劣悪な衛生施設や衛生状態に関連する病気で、毎年約30万人の子どもたちが命を落としています。
つまり、予防可能な水と衛生関連の下痢性疾患が原因で、1日に800人以上の子どもたちが亡くなっているのです。

汚染された水は、コレラ、赤痢、A型肝炎、腸チフスなど様々な感染症の伝染を引き起こします。
また、下痢は、子どもたちの栄養不足をさらに促進し、マラリアや肺炎などの病気に対する免疫力も奪い、身体や精神の発達を妨げてしまいます。
さらに、抵抗力の弱い乳幼児は、下痢による脱水症状だけでも、命を落としてしまいます。


●特に女性は、安全なトイレがないことで、人間の尊厳が傷ついています。

トイレは、とりわけ女性にとって、大きな問題です。

誰でもトイレをしている姿は、人には見られたくないものです。
清潔なトイレで人目に触れず、安心して排泄できる環境づくりが、一人ひとりの尊厳を守ることに不可欠です。
特に、「用を足している姿を人に見られるかもしれない」不安は、思春期を迎えた女性には切実な問題です。

家にトイレがない、また集落の中にもトイレがない地域などでは、女性や女の子たちは、暗くなるのを待ってから、林の中など排泄のための静かな場所を探すことが必要です。
野外の、人通りのない時間や場所を選んで排泄に行くため、住んでいる場所から遠かったり、トイレがあっても明かりがついていなかったりなど、そこが暴力を受ける危険な場所となりがちで、襲われたりするおそれも高まります。
コブラなどの毒蛇にかまれる危険性もあります。

また、トイレがないために、学校を休む女の子も多くいます。
学校を休むうちに授業がわからなくなるなど、トイレは教育にも大きな影響を及ぼします。
実際にユニセフの報告では、アフリカの女の子の10人にひとりは、トイレがないという理由から、例えば生理中は学校を休んだり、退学してしまったりしているという調査結果もあります。
学校にまともなトイレが備われば、女子の就学者は11パーセント増加するとも言われています。

このようなことから、SDGsでは、「安全な水とトイレ」のターゲットの一つとして、
「2030年までに、女性及び女児、並びに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。」を特記しています。


●病気と貧困の悪循環が進んでいます。

「安全なトイレがないこと」によって生じる問題は、ほかにもあります。

例えば、手洗いの習慣。
トイレ環境が不十分な地域では、多くの家庭、学校、保健施設においては、手洗いのための水や石けんが備えられていません。
だから手洗いの習慣もなく、水とトイレの状態が不衛生な悪循環を作り出しています。

また、十分な医療も確保できません。
地域の衛生状況が適切でないということは、同様に医療施設にも適切な衛生設備がないということです。
患者や医療従事者は、本来予防可能な感染症によって命を脅かされる危険もあり、医療が十分に普及しません。

このように、「安全な水とトイレ」を利用できない環境を強いられている人々は、病気にかかり、治療費がかさみ、学校にも行けない、働けないために収入も得られない、といった「貧困と病気の悪循環」で貧困から抜け出すことが難しくなっていきます。
そして、複合した問題は解決が難しくなり、やがては次の世代にも受け継がれていく「貧困の連鎖」が起こっていきます。

    【安全に管理されたトイレを利用できる人々の割合(2017年)】

 
                      ユニセフ・WHO共同監査プログラム報告から

●安全なトイレを世界中に ~ SDGsの実現に向けて

以上、安全なトイレを使用できない人々が多数存在し、野外排泄を強いられていること、劣悪な衛生環境のために病気になり、助かるはずの命を失っている乳幼児や、尊厳を貶められている女性など、世界の深刻な現状を見てきました。

安全で清潔なトイレを安心して利用できることが人間の基本的な尊厳を守ることだと実感するなら、この世界の状況は、とても見過ごせない事実です。
水とトイレの衛生的な普及は、最重要課題として真っ先に取り組まなければなりません。

さらに、不衛生な水やトイレによる病気が原因で、保健医療費の支出や生産力の低下が生じ、結果として多くの国は、GDPの約5パーセント分を失い、年間2,600億ドルの経済損失が生じているという試算も出されています。
基本的な衛生設備を利用できないことが、社会や経済に大きな影響を与えていることは明らかです。

一方、世界銀行グループ、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)による共同調査によると、基本的な水道・衛生サービスを未供給の人々に普及するためには、2015年から2030年にかけて、毎年284億ドルが必要になると見込まれています。
これは、調査対象となった140カ国のGDP全体の、0.10パーセントに相当します。

このように、理念的にも、経済的にも、実現可能なはずなのですが、 にも関わらず、世界のトイレ問題がなかなか解決しないのは、なぜか?

冒頭で触れた「11月19日は世界トイレの日」の提唱者である、シンガポールの社会起業家ジャック・シムさんは、

「一番大きな理由は、トイレ問題が『タブー』だからだ。下品、汚い・・私たちは子どもの時から、トイレや排泄物の話をしないように、と教えられて育つ。・・・問題について話すことができなければ、その問題を解決することなんてできない。」と看破しています。

そして、「タブー、すなわち人々の羞恥心の壁を打ち破るために、私がとった戦略は、『笑い』すなわちユーモアだ。」として、「世界トイレ機関」(WTO:World Toilet Organization)を立ち上げました。

このジャック・シムさん、「トイレの伝道師」「ミスター・トイレ」と呼ばれる、実におもしろい人です。
少しだけ、名語録をご紹介します。

「トイレは世界を救う」「社会の糞詰まりを治す」
「トイレは世界で最も幸せな部屋だ。トイレに入る前は居心地が悪く、不安でイライラしていても、出てきたらハッピーだからだ」
「くさいものにフタをせず、笑いに変える」「水に流してはいけない社会課題」
「トイレは作るより、使い続けてもらうことが難しい」
「トイレは単なるインフラではなく、文化だ」
「クソみたいな感情を肥料に美しい花を咲かせる」

ジャック・シムさんは、1998年にシンガポールで「お手洗い協会」を始め、それまで「タブー」として公で論じられることが少なかったトイレの問題を、人類が健康に生きるための基本問題と位置づけて活動を開始しました。
2001年に「世界トイレ機関」(WTO)に改名したのも、「WTO・世界貿易機関」と間違えられて話題になるためだったようです。

その後、世界各地で「ワールド・トイレ・サミット」などのトイレ普及活動を展開し、やがて国連に「世界トイレの日」が公認されるなど、人々の感情や文化、政治などとも闘いながら、ユーモアを持って夢を追い続け実現していく様子は、本や映画にもなっています。

国連が、トイレというタブーを破り、衛生施設の普及を世界的な開発優先課題に据えなければないと訴えているのも、カルティエやグッチなどの高級ブランド企業やクリントン元大統領がトイレ普及に協賛するのも、あのビル・ゲイツ氏が財団を創り「トイレ・チャレンジ」活動を進めているのも、ジャック・シムさんの影響が大きいとのこと。

世の中には、いろんなすごい人がいるんですね。

 

SDGsの名前と内容が、段々と普及してきた現在。
多くの国際機関や民間団体、民間企業等も、発展途上国にトイレを普及するプロジェクトを行なうなど、世界のすべての人たちが安全なトイレを利用できることをめざした活動が広がっています。

例えば、ユニセフ(UNICEF:国連児童基金)の活動は、ホームページの「世界トイレの日プロジェクト」から確認できます。

SDGsを実現していくには、「誰ひとり取り残さない」理念のもと、先進国も発展途上国も、すべての国の政府や国会をはじめ、国際機関、地方政府、先住民、市民社会、民間企業、NGO・NPOなどの民間セクター、科学者・学会、そして市民の一人ひとりなど、あらゆるステークホルダーが、目標達成のために、現状を知り、意識し、具体的なアクションを考え、行動を変えていくことが求められています。

日本に住む私たちも、まずはトイレに関する世界の現実を知ることが大切です。

日本もかつて、下水道が普及するまでは、トイレは決して清潔ではありませんでした。

トイレのことを「厠(かわや)」と言うのも、元々は川に板を張り出して排泄していたことが語源だそうです。
また、昭和生まれの人の多くは、トイレが「汚い、暗い、臭い、恐い」という思い出が、実感でわかると思います。

昭和の後半から、経済復興とともに下水道も普及し、それに伴い水洗トイレが定着し、トイレの清潔度は増していきました。
今では、世界有数の清潔で便利なトイレの国になっています。
この第2次世界大戦以降の日本の復興、経済発展、インフラ整備は、 様々な国際社会からの支援によって実現できたことも 忘れてはならない事実です。
日本の優れたトイレ環境実現の歴史と経験、知識・技術は、必ず世界の役に立つものだと思います。

「世界トイレの日」やSDGsをきっかけとして、あらためて、トイレの大切さや、世界のトイレ・水問題、さらには国際協力などについて、 少しでも想いを巡らせていただけたら幸いです。

児童虐待をなくすためには、周囲のみなさんが子どものSOSサインに気づき、通報していただくことが、何より重要です。SOSサインに1つでも気づいたら、迷わず自動相談支援センター☎072-724-6233(夜間・休日は自動相談所全国共通ダイヤル☎189)へお電話ください。 

 

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