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シンポジウム開催レポート「 箱根山地シカ問題の解決に向けて 」 小田原山盛の会

2018-03-14 10:06:11 | 小田原山盛の会
2018年2月24日シンポジウムレポート
「箱根山地シカ問題の解決に向けて」‐丹沢・箱根山地から見えてきたもの‐ 





古林氏の発表 3年間の成果発表が古林氏、柏木聰氏、川島範子により行われ、3名のゲストの方のミニ講演の後、総合討論が行われました。

第2部 総合討論議事録
司会・古林賢恒氏 (元東京農工大・元丹沢大山総合調査副団長)
羽太博樹氏 (神奈川県自然環境保全課)
大場孝裕氏 (静岡県農林技術研究所)
濱崎伸一郎氏 (株式会社野生動物保護管理事務所)
川島範子 (特定非営利活動法人小田原山盛の会)


   


古林) 第1部の流れを確認。まだ余裕があるのか、大変なのか。対策としてフェンスと捕獲がある。捕獲の効果的な方法、モニタリングの方法について考える場にする。 
生活痕跡の分布図、ホットスポットの分布図。箱根でシカ食害などの痕跡がないところはない。図の赤丸がホットスポット。大場氏の説明でシカの行動圏は50ha、行動圏には3.5~4.5 haのコアがある。箱根山地では新植地、登山道、関東大震災や伊豆大地震による崩壊地、林道、土捨て場、伐開地、仙石原ゴルフ場周辺、芝などの植物性廃棄物場が主要な餌場。箱根のゴルフ場のうち1か所はフェンスがあるが、他にはない。シカが居ついている。台が岳周辺の6,200ha、南足柄から小田原まで9,500haが森林面積となっている。合計1万5千haは丹沢とほぼ同じ面積。丹沢では、丹沢山からヤビツ峠まで7,000ha、15年間に1,400haで伐って植えた。1955年から15年間シカを捕獲しなかった。そのためシカの個体数が爆発し、シカ問題が大きな社会問題になってしまった。箱根では今後もスギやヒノキを植えなければならない。新植地はシカのエサ場になる。 箱根全域に分散分布するホットスポットでは、低木が折られる。低木が矮性化する。剥皮が起こる。いたるところで枝角研ぎが発生している。パネリストの皆さん、他地域での経験から箱根のシカ調査結果をどのように感じましたか。

大場) メスの群れは、娘が母親の行動圏に留まり高密度化していく。そして、なにかの弾みで行動圏を飛び出し別の場所に定着することがある(分散)。シカが分布拡大してきた南伊豆も箱根と同じようにアオキがどんどん食べられている。箱根の西側を見て回った5年ほど前と、今回の報告を比べるとシカの影響が急激に進んだことが伺えた。今後シカは増加すると理解してよい。

濱崎) 1990年兵庫県のシカの生息地にアオキはすでになかった。分布の周辺にはあった。箱根はまだアオキがある。3年前に比べて、シカは毎年増えて採食圧がかかるところが拡大している。関西地域のシカ分布拡大地域では、ササが密生していたところでパッチ状にササがなくなったなと感じた5~6年後にはササが衰退して歩きやすい森林になってしまった場所もある。箱根もうかうかしていられない。

羽太) 伐開地が大きく増えるかということについては、森林の持続的な利用に伴う伐開地は生じるが、戦後の丹沢で見られたような拡大造林政策に伴う流域単位の大規模な伐開地は生じないと思う。



川島) 山はあちこちで伐期となり搬出路ができ林道が新しく作られている。餌場がたくさんできシカは益々増えていく。

古林) すでにシカは定着しているので伐開地を増やすとシカの分布域やホットスポットの規模は次第に拡大する。シカを増やさないためには伐開地にフェンスを作るしかない。すでに赤丸のホットスポットにオスがいる。ホットスポットで撮影されたセンサーカメラの映像を見せる。
1.小田原市塔の峰青少年の家跡地では、メス5頭、オス1頭。オスが発情してメスに寄ってきた。(2017年11月8日)
2.久野林道の無花粉スギ新植地のとなりに設置したカメラには2017年11月から2018年2月にかけて、アオキを誘引物としてセットしてある。オス同士が角を突きあっている。オスとメスが来ている。ここにアオキの枝を挿すと1月でも来る。アオキがなければスギ・ヒノキを採食する。新植地を封じ込めないとシカが増加する。増加したシカは分散、移動により農地に出没する。
水源環境保全税は、平成38年度までと聞く。柵やシカ捕獲は、その後はどうなるのか。

羽太)水源環境保全税を財源とする水源環境保全・再生施策は、平成19年度から20年間の大綱に基づいて5年刻みで実行計画を立てて推進している。その中で水源地域の自然植生の回復や土壌保全対策、高標高域のシカ管理などを行っている。水源施策の大綱は平成38年度までで、その後は、現時点では分からない。ただ、森林整備やシカ管理は、終わる事はない。

古林) 箱根の新植地でフェンスが可能か。 

羽太)丹沢では、新植地にはフェンスを必ず設置せざるを得ない状況だが、基本的にシカがいるからと言って全ての新植地に一律に設置はせず、必要最低限としている。だだし、箱根ではシカは増加傾向なので設置していく事になるのではないか。県行造林地でも設置を検討している。また、森林組合などにもフェンスを設置する必要性について助言指導していく。

古林) 柵は1mで6,000‐7,000円かかる。急斜面は穴があく。見回りが大切になる。堂平で50m×50mの柵を23年前に作ったが、現在は中にケモノ道が出来ている。維持管理に費用がかかる。そこで、併用してシカの捕獲が不可欠になる。
 次に捕獲についてパネリストのご意見をお願いする。

濱崎) シカの猟法としては一般に巻狩りが行われている。5,6人から20人くらいのグループで、勢子と呼ばれるシカを追う人と待ちと呼ばれる獲物を銃で仕留める人の共同作業である。それぞれの地域の状況に合わせて地元の猟友会が継続的に実施している猟法で、適した方法と考えられる。ただし、狩猟者の減少と高齢化が進む中では、他の方法も模索していく必要がある。

羽太)
県では平成15年度から丹沢で巻狩りによる管理捕獲を始めている。巻狩りによる捕獲で生息密度も減少傾向に転じさせることができた。しかし、高標高域など一部で巻狩りが実施できない箇所があり、そのような場所での新たな捕獲手法としてワイルドライフレンジャーによる捕獲が実施された。どちらも丹沢にとって必要な手法。また、山麓部では、市町村や農協などがわな捕獲を行っている。

大場) 静岡県では、巻狩りから足くくりワナに移行しており、ワナを徹底してやって成果が上がっている。高密度ではワナがよいが、シカが低密度で生息している状況では、イヌをつかうと人間が感知できないものに対処し、有利となるので、巻狩りが適している。
「静鹿(しずか)ちゃん」というワナがある。誘引し、餌付けしてトリガーをセット。首をくくる。食べ物がないときにヘイキューブで餌付けする。箱根でもエサが少なければ牧草で餌付けできるかもしれない。まだアオキがある場所では餌付けできないかもしれない。神奈川県でも今年から使える。里は銃よりもワナが中心の方がよい。

古林) 囲い罠を設置されている箱根町の話を紹介する。



小笹(箱根町環境課)浄水センターに囲い罠を設置。箱根町は環境課、猟友会などが協力し誘引捕獲を行っている。現在3基を設置。仙石原に2基、宮城野に1基。丹沢から来るシカが多いと考えられるが、丹沢と伊豆の両方から来ると考えている。小田原山盛の会の見学会で「静鹿(しずか)ちゃん」を紹介された。神奈川県で今年から許可された。購入して使っている。バケツに頭を入れる所まで。まだ捕獲はない。囲いワナは平地のみ、首くくり罠は斜面でも使える。

川島) 誘引物は何か。醤油は?

小笹)
ヘイキューブ。塩をまいても効果ない。

羽太) 参考までに、丹沢でワイルドライフレンジャーが誘引捕獲を行ったときは、ヘイキューブに醤油をかけていた。

濱崎)
狩猟者の人数が50万人から10万人に減少。効率よく捕獲する必要がある。密度の高低など地域の状況に応じてテストしながら、よりよい方法を検討し作戦を立てる。

大場) 給餌器をセットすると仔だけが食う。母は食わない。母を捕れればいいがとれない。オスを捕ることも必要であるが、個体数を減らすためにはメスを捕ってほしい。くくりワナにかかった動物はこわい。死にもぐるい。ワナにかかった個体を安全に処理するのはもう1か所くくってから止め刺しを行う。技術が必要。

古林)
素人が実施するには、いろいろ難しい問題がある。試行錯誤で進める必要がある。誘引物については、今、アオキが退行しているエリアでは、アオキで誘引できることがわかった。センサーカメラの映像はシカがカメラ目線でカメラを気にしている。シカを誘引し、興味を引く場にしていくには、警戒しないものを知る努力が必要になる。

大場)
シカにとっての「魅力」と「警戒」のバランスが被害対策や捕獲を考える上で重要。飼料等誘引物を使ってシカに対する魅力をあげる。一方で、人工物には警戒するので馴らすことが必要。地面に置いた家畜飼料には冬季であれば短期間で餌付くが、プラスチックの給餌器に入れて与えると母親は警戒し、なかなか食べない。「魅力」と「警戒」のバランスは、環境や季節や個体によっても変わる。シカは2色型色覚で、黄色と青の世界。人間にとって目立つ(猟友会の)オレンジは、シカにはあまり目立たない色になる。

古林) フェンス、ワナいろいろ考えなくてはならない。ワナで成功事例が多い石綿さんの話をお願いしたい。

石綿(小田原市、有機農法研究会)くくりワナで、1年間で16頭とった。ワナを設置すればとれるというわけではない。誰でもとれるわけではない。イノシシやシカは鼻が利く。警察犬と同様である。ワナをセットするのに10分から30分かかる。人のにおいが付くとシカは来ない。ばれている。要するに釣りの上手な人が多く釣るのと同じ。魚の状態が分からなければ釣れない。経験が必要である。経験が頼り。

古林) 30年前金華山でサルを見ていた。何が重要かは、そのサルやシカが次に何をするかを考える経験が必要になる。石綿さんが坊所でワナで16頭とった。本気になってシカの生態を調べワナを成功させる必要がある。

ここから会場で集めた質問書に回答を行う。
質問)
箱根山地は、シカ定着防止地域ということだが、根絶を目指すのか、それとも限りなく低密度を目指すのか。その方針は、地域で合意されているのか。

羽太) 箱根でシカを根絶できるとは考えていない。周辺から随時入ってくるだろうが、定着させないで、限りなく低密度で抑えたい。シカ管理計画は、鳥獣総合対策協議会などで議論して合意形成を図っている。

質問) 銃所持10年未満のワイルドライフレンジャーや実施隊のライフル使用を認めることについてどう思うか。

羽太) ライフルと散弾は、それぞれの特性に応じて使い分ける必要があるが、認定事業者や実施隊が、銃所持10年未満でもライフル銃の使用を認められる特例措置は、適切に運用されていると思う。

質問) シカはいらないのか。

古林) 保護管理は人間を管理すること。一人でも多くの方がシカ問題とは何かを考えてほしい。シカが増えたので殺せば済むという問題ではない。

濱崎) シカが増えているのは大きな問題。捕獲は必要な手段である。温暖化により豪雪年がなくなり、かつて10年程度ごとに見られていたシカの大量死が見られなくなった。シカと人間の歩んだ歴史が変わってきた。捕獲を1つのオプションであり、絶滅させることを目的とするわけではない。どの程度の密度レベルに抑えるべきなのか、捕獲についても責任ある試行錯誤が必要である。

大場) シカは大好きな動物だが、その影響をみると減らさなくてはならない。対策(化学的防除)を研究している。メスの群れは定着する。シカはどこにいるか。人に対して安全で餌のあるところ、同じ場所を使い続ける。ときおり、行動圏を飛び出す。戻ってくることが多いが、魅力的だったのか行ったきりになることもある。そして新たな行動圏を作る。そうやって分布が拡大する。基本的には同じところを使い続ける。安全なところで高密度化が起こる。シカは見えないのでGPS首輪を付けるとどこを利用しているか、いつ活動しているかよくわかる。

質問) シカは群れで移動しながら生活しているのか。

大場) メスの群れは定着する。シカはどこにいるか。人に対して安全で餌のあるところ、同じ場所を使い続ける。また新しい分布を求めて飛び出すこともある。居ついた先が魅力的だとそっちに居つく。新たな行動圏を作る。分布が拡大する。基本的には同じところを使い続ける。安全なところで高密度化が起こる。シカは見えないのでGPSつけるとどこにいるかがわかる。

質問)
農家がやるべきことは何か。

古林) 農家がやるべきことはフェンスを作ること。

古林) シカとの共存は永遠の問題である。是非、一人でも多くの方が現場に足を運んでいただき、自分の目で確かめて戴きたい。すべての対策には費用が生じる。シカ問題の深刻さを知ってもらいたい。

以上
・・・・

報告冊子のご案内



平成29年度箱根山地シカ問題報告書を3月下旬に発行します。
A4カラー 40ページ 
2015~2017年調査の生活痕跡調査、雄ジカの角コスリ樹種、分布、
アオキ過食圧地の分布、シカの胃の内容物、林業被害調査などの結果を報告しています。
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