東芝は、会社更生手続き中のエルピーダメモリの支援企業を決める入札に韓国の半導体大手SKハイニックスと共同で応札する方向で調整に入った。
東芝とハイニックスは、NAND型フラッシュメモリーとDRAMのそれぞれ2位メーカー。ともに首位の韓国サムスン電子に、その差を広げられつつある。
サムスン独走態勢への危機感が共同買収へと突き動かしている。
●2位グループを引き離し
3月末に締め切られた1次入札では、米マイクロン・テクノロジーが最高額を提示した。関係者によると提示額は1500億円を上回った模様
マイクロンの提示額を大幅に下回った東芝はこの時点で支援企業候補から脱落したが、1次で勝ち残った企業との連携で2次入札に臨む作戦。
次世代メモリーの開発で提携しているハイニックスに白羽の矢を立てた。
「エルピーダ買収で手を組めないだろうか」。東芝の半導体部門の幹部がハイニックス幹部と秘密裏に会談するため訪韓したのは、3月下旬。両社の折半出資で経営権を握るプランを提示した。
社会インフラとフラッシュメモリーを中核事業に位置づける東芝は、エルピーダ買収に投じる資金をできるだけ抑えたい考え。官民ファンドの企業再生支援機構に支援を仰ぐことも検討している。
東芝がなりふり構わずエルピーダ買収の手立てを画策するのは、フラッシュメモリーで首位のサムスンの背中が遠のいているため。
サムスンは、携帯情報端末用DRAMとフラッシュメモリーを一体化した製品で高いシェアを持つ。最先端品の開発で他社をリードし続け、積極投資の手も緩めない。
4月2日には、中国西安市にフラッシュメモリー工場を70億ドルを投じて建設すると発表した。世界のスマートフォンの生産基地となった中国に大型工場を構え、スマートフォンに搭載するメモリー需要を取り込む方針。
完成すれば、フラッシュメモリーでは東芝を生産能力で大きく上回る。DRAMでも2位のハイニックスの倍近い生産能力を持つ。1兆円を超す潤沢な手元資金を生かし、東芝・ハイニックスの2位グループを引き離しにかかっている。
2015年頃から本格普及する次世代メモリーで、サムスンは「全てのライバル企業と競えるよう、あらゆる領域の製品を開発中」(同社幹部)という。
●サムスン対抗で一致
昨年、フラッシュメモリーで長年のライバルだった東芝とハイニックスが次世代メモリーで提携したのも、多額の開発費用を分担し製品化のスピードを上げるのが狙い。
サムスン対抗の必要性で一致する東芝とハイニックス。共同買収について東芝首脳は5日夜、「あとはハイニックスがどう判断するかだ」と語った。
2次入札にはほかに海外の投資ファンドも応札する模様。エルピーダは4月末に2次入札を締め切り、5月にはスポンサー企業を決定する予定。
【記事引用】 「日本経済新聞/2012年4月6日(金)/9面」