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高付加価値タイプのインダクタ、国内生産規模が拡大 新分野向けに伸長

2011-08-02 | SMD



 インダクタにおける高付加価値製品の国内生産規模が拡大している。

 労働集約型の汎用コイルは、中国を中心に海外生産が定着化。国内では自動化生産による小型、高性能の高付加価値インダクタの生産比率が高まっている。

 また、新しい市場として、LED照明、エコカー、太陽光発電といった環境、省エネ分野における大型インダクタや高性能インダクタの需要が出現。

 インダクタメーカーは、こうした成長分野に向けて、マテリアル、プロセス、評価・シミュレーションの最新技術を融合して、新たな成長戦略を展開している。


●スマホ・タブレット市場拡大

 経済産業省の生産統計によると、インダクタの国内生産は過去最高が数量ベースでは08年の309億8900万個、金額ベースでは07年の383億200万円。

 だが、08年後半からのリーマンショックを機に世界同時不況で、09年の生産は数量が前年比14.8%減の263億9200万個、金額が同27.7%減の264億2400万円まで減少した。

 世界の主要国が一斉に経済対策を講じたこともあって、薄型テレビ、パソコン、携帯電話、自動車などの主要分野の生産台数が月を迫って拡大。

 10年には数量が前年比58.5%増の418億2200万個、金額が同57.2%増の415億3600万円に達した。

 11年は当初、10年の高水準の生産を維持していたが、3月11日に発生した東日本大震災の影響で、生産増大の基調にブレーキ。それでも1-5月の生産規模は、数量が前年同期比20.5%増の185億3700万個、全額が同0.4%増の166億3100万円に達した。

 主要各社によると、大震災で自動車向けなどの需要が減少。しかもパソコンや一般携帯電話、薄型テレビ向けなどの需要も振るわなかった。

 しかしながら、スマートフォンやタブレット端末、さらには産業機器分野などで市場が拡大した。

 特に、大震災や原子力発電の運転停止などでエネルギー問題がクローズアップ。節電機運の高まりもあり、LED照明の消費が急増。エアコンをはじめ、産業機器分野まで省エネ化でインバータの採用が広がった。

 さらに、太陽光および風力発電といった再生可能エネルギーを導入する動きが表面化。こうした新しい市場がインダクタの需要を押し上げている。

 11年後半は、震災の影響で生産調整していた自動車の生産台数が一気に増加。しかもEV、HEVといったエコカーの生産台数が増加することから、自動車車載用インダクタ市場が大きく伸びる見通し。

 さらにLED照明は、引き続き電球タイプに加え、直管タイプなどの機種が多彩化するとともに、看板、表示器、電灯などの屋外製品も普及する。

 新しいエネルギーとして再生可能な太陽光や風力発電などの建設も活発化する見通し。


●求められる小型・低背化

 関連して、インバータの普及や各種製造装置の生産台数増加も期待できる。業界では、11年の国内インダクタの生産規模はおよそ500億個、450億円に達すると予想する。

 インダクタは高周波回路用から各種回路のノイズ対策、さらには電源回路向けまで、小型、低背化が強く求められている。

 携帯電話および無線LAN、ブルートゥースといった高周波無線通信などで使用される高周波チップインダクタは、小型化が強く求められている。

 特にスマートフォンの出現で、より小型、薄型化ニーズが高まつている。最近では積層タイプを中心に、薄膜タイプ、巻線タイプでの小型化の動きが活発化している。

 最も生産規模が大きい積層インダクタは既に0603サイズの採用が本格化。高精度を特徴とする薄膜インダクタも、0603サイズまで商品化されている。

 巻線インダクタはQ値が高いことを特徴としており、1005サイズまで量産されている。携帯機器は小型、軽量化とともに動作時間を長くすることが強く求められている。

 しかも、多機能化することで復数のDC-DCコンバータが搭載されるようになってきた。その電源には高性能なパワーインダクタが必要で、特に小型化が求められている。

 パワーインダクタは一般的に巻線インダクタが使用されており、厚みが2mm以下の低背で大電流対応が活発化。さらに、低背化のニーズには積層タイプにおける厚み1mm以下を実現した。

 DC-DCコンバータは携帯電話からパソコン、自動車、太陽光発電用パワーコンデイショナまで様々な分野で使用されている。キーパーツであるチョークコイルには小型、高効率で大電流対応が求められる。

 これまでのチョークコイルは、コア材としてフェライトを用いるのが一般的だった。しかし、フェライトコアベースのチョークコイルでは用途によっては性能に限界を生じるために、新しいコア材料が用いられるようになつてきた。

 最近では、金属磁性材料であるメタルコンポジットやダストコアを使用したチョークコイルの新製品開発が活発化している。しかも、コア形状が多様化するとともに、巻線工法もコア材料の特性を生かすための工夫が施されるようになってきた。

 その代表的な巻線工法が平角線を縦巻きするエッジワイズ巻き。エッジワイズコイルを採用することによって、小型で高性能なチョークコイルが相次いで出現している。


●車載分野の伸びに期待

 インダクタの市場で今後さらに拡大するとされているのが自動車車載分野。

 EV、HEVといったエコカーを含めて、様々なインダクタが数多く搭載されているが、全てのインダクタに共通しているのが、耐環境性。特に高温度信頼性の向上が強く求められており、125℃対応が一般化。

 最近では、150℃対応で設計のインダクタの採用が広がっている。既に180℃対応の製品を開発している企業もある。

 ノイズ対策向けでは、様々な製品が出現している。

 特にフェライトビーズ、積層技術を用いた積層インダクタは汎用的に使用され、0402、0603サイズなど超小型化、復数ラインのノイズ対策を可能にするアレイ化など、特に高密度実装化の進展が市場裾野の拡大に作用している。

 最近では、コモンモードチョークとして薄膜タイプの技術が注目されている。また、大型のノイズ対策用コイルは、高減衰量、低漏洩電流など、高性能化に向けての最適な材料、加工技術が採用されている。





【記事引用】 「電波新聞/2011年8月2日(火)/2面」


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