東北地方にはデジタル家電や電子部品、半導体などの工場が多く、茨域県内には日立製作所の拠点が集積しており、各社は状況確認に全力をあげている。
建物や設備の破損がみられる工場もあるほか、電気やガスなども停止しており、週明けからの再開は困難な状況。物流や調達を含めたインフラの復旧次第では、生産停止が長期化する可能性がある。
●再開に時間
電子部品大手では、アルプス電気が東北に生産拠点が集中、長岡工場(新潟県長岡市)以外の国内工場で生産をすべて停止した。
携帯端末、テレビ、車載電装品など向けの押しボタン式スイッチ、エンコーダ-などの供給に影響が出る可能性がある。
物流倉庫に一定の在庫は担えているが、再開の見通しは立っていない。中国でも生産しているが、仕様や形状が違うため生産移管は難しいという。
村田製作所は宮城県内の2工場はライフラインが寸断しているため、再開には時間かかりそう。
シェアが高い表面弾性波(SAW)フィルターは米アップルのスマートフォン「iPhone」にも採用されているもようで、他工場へ代替などで供給への支障を最小限にするよう努力する。
同フィルターは、金沢村田製作所(石川県白山市)と仙台工場(宮城県仙台市)の2工場で生産している。このため、操業が止まっている仙台工場に代わり、金沢村田製作所から一定量を供給可能。
金沢村田製作は需要増を受け生産能力を増強していたため、当面の供給は継続できる見込み。コンデンサーを生産する小山工場(栃木県小山市)は早期に復旧できる見通し。
●浸水被害も
日立は地震発生直後に対策本部を立ち上げ、週末も幹部が出社して状況確認に努めた。茨城県内には電力、昇降機、車載機器など主要事業の生産が集中。
「工場の中には設備に損害が出ており、再開には時間がかかる」(日立製作所)。日立建機や日立電線の工場は浸水被害を受け、グループ全体で影響が大きい。
宮城県内に拠点が多いソニー。仙台テクノロジーセンター(多賀城市)では13日時点でも、従業員など400人が浸水した1階から上層階へ避難中で、救援物資がヘリで届けられた。
半導体レーザーを製造するソニー白石セミコンダクタ(同白石市)は、停電により操業を停止中。
設備破損はないが、リチウムイオン電池などを製造するソニーエナジー・デバイス(福島県郡山市)も停電で操業停止。半導体レーザー、電池とも設備調整に時間がかかる見込み。
パナソニックはデジタルカメラなどを生産する福島工場(福島市)と、光ピックアップの生産拠点である仙台工場(宮城県名取市)が軽微な損害を受けた。
再稼働には物流、調達などの復旧状況に左右されるため、今後の対応を検討する。デジタルカメラ用レンズを生産する山形工場(山形県天童市)には被害はなかったが、福島工場の稼働状況に影響される。
京セラは、福島県や山形県の工場設備の影響を調査。14日からの操業は慎重に検討する。
ニチコンは、岩手工場(岩手県岩手町)で避難勧告に従い従業員が避難。そのため、建物や生産設備の被害状況は確認できていない。
●再開時期未定
半導体では、ルネサスエレクトロニクスは津軽工場(青森県五所川原市)など7工場の操業を停止している。鶴岡工場(山形県鶴岡市)は再稼働に向けての立ち上げ作業に入ったが、再開時期は未定。
他の6工場は、生産設備の安全の確認作業を続ける。
東芝や富士通は、月曜日以降に被害状況を改めて精査するという。ロームは子会社のOKIセミコンダクタ宮城(宮城県大衡村)で建物の倒壊や火災はなく、今後、設備を点検する。
新電元工業の秋田、山形の半導体生産子会社は建物などに被害はなかった。2日から安全確認作業を始めている。
その他では、セイコーエプソンは人工水晶を製造する子会社(青森県八戸市)が津波の影響で停止している。エプソントヨコムの福島事業所(福島県南相馬市)は、福島原発の避難区域拡大により一時閉鎖している。
リコーは、トナーを製造する東北リコー(宮城県柴田町)の給水タンクが破損した。復旧にはかなり時間がかかり、製品出荷にも影響が出る可能性もある。
【記事引用】 「日刊工業新聞/2011年3月14日(月)/9面」