電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた日本の電子部品メーカー107社の2008年度出荷額は世界不況の影響で、前年度比23%減の3兆7678億円に落ち込んだ。
回復のシナリオについて、JEITA電子部品部会統計予測委員会の谷田部政雄統計ワーキング主査に聞いた。
――出荷額が初の前年度実績割れとなった。
統計は04年4月に始めた。07年12月まで24力月連続で前年同月を上回ってきたが、08年に入り状況が変わった。10月から階段を転げ落ちるように急減。
09年1月には、前年同月比で半分まで落ち込んでしまった。
――なぜそのような事態になったのか。
原油高などで元々景況感が悪かったところに、北京五輪商戦の不振と米国発の金融危機が重なった。
最終需要の悪化から完成品メーカーが在庫調整に乗り出し、電子部品メーカーへの発注が急減した。従来は、悪いといっても世界の中で景気のいい地域や業種があった。
今回は、全地域・全用途が落ち込んだ。まさに、100年に1度の危機といえる状況だ。
――09年度の回復見通しは。
統計を見る限り、海外向けが今年1月、日本向けも2月を底に緩やかに回復している。
もっとも、08年度の実績を上回るのは難しいだろう。08年は9月まで前年同期に比べ9割前後で推移していたからだ。09年度の世界出荷額は08年度比で8割程度と期待している。
――本格回復と言えるのか。
注視していく必要があるが、生産現場では実際に稼働時間が増えている。
景気刺激策の効果などもあり、中国市場に勢いがある。もっとも、日本の産業にとっては元気の源である自動車の回復が待たれるところだ。
落ち込みが大きかったコンデンサーや小型モーターは、自動車で多く使われる。例えば、小型モーターは電動ドアミラーの制御など、1台に数十個単位で組み込まれている。
――電子部品の平均単価が下落する傾向があり、市況が回復してもこれまでと同じ収益を得られないのではないか。
日本の電子部品メーカーは技術力を武器に、価格一辺倒ではない競争を続けていく必要がある。超小型化や複数機能の集積、抜きんでた特性といった点だ。
生産技術でも世界をリードしており、価格対応力で劣るというわけではない。
――今回の世界危機が電子部品メーカーにもたらした教訓は。
環境の変化に耐える筋肉質の企業体質に変革し、それを保っていくべきだということ。
急激な需要の減退や回復に対応するため、リードタイムを短縮するサプライチェーンの整備などが急がれる。市況が厳しくても次世代を見据えた開発の手を緩めないことも大切だ。
今はそうは見えなくても、ハイブリッド車だけではなく電気自動車も売れ筋となる時代が必ず来る。
【記事引用】 「日経産業新聞/2009年6月12日(金)/5面」