現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

ストーリ展開か、シーンの面白さか

2016-03-31 09:06:44 | 考察
 現在の児童文学では、ストーリー展開の面白さよりも、 個々のシーンの面白さの方が優先されることが多くなっています。
 読者の子どもたちが長い物語を読み通す集中力を維持できなくなっている面もありますが、テレビやネット、ゲームなどの世の中の風潮が、その傾向を加速しています。
 そのため、個々のシーンが面白くないと、読者が途中で読むのをやめてしまう恐れが強くなります。
 特に、書き出しで読者を強くひきつけないと、作品世界に入り込んでくれないでしょう。
 仮に話が途中から本線から脱線してしまっても、物語の一貫性を保つより面白いシーンを描くことの方が優先されます。
 また、シーンの面白さを保証するために、話の本筋に関係なくても、いわくありげな魅力的なキャラクターをたくさん登場させることも重要です。
 ようは、作品のモチーフ、登場人物、、小物のネタなどに、どんどんアイデアをだして、面白いシーンをたくさん作りだす必要があります。

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3月30日(水)のつぶやき

2016-03-31 08:51:07 | ツイッター

「中脇初枝「こんにちわ、さようなら」きみはいい子所収」 goo.gl/4rGLD7


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中脇初枝「こんにちわ、さようなら」きみはいい子所収

2016-03-30 09:49:51 | 作品論
 認知症にかかり始めていると思われる八十歳をとうに超えている一人暮らしの老女と、障害を持った小学生の男の子が、「こんにちわ、さようなら」とあいさつを交わすことで触れ合う物語です。
 作品の狙いは面白いし、今日的なテーマを持っています。
 しかし、書き方が老女の声に出さないモノローグ(最後の部分は少年の母親の文字通りのモノローグ)なので、二人の結びつきが読者の心に自然に響いてきません。
 また、少年の母親が、見ず知らずの老女に(前にスーパーで万引きの疑いをかけたことはありますが)、唐突に心を開いて、深刻な内容をベラベラと話し出すのはあまりにも不自然です。
 かつて児童文学者の安藤美紀夫は、「児童文学はアクションとダイアローグで書いた物語」と定義していましたが、この作品ではあまりにもアクションとダイアローグが足りないと思います。
 確かにこの作品は大人の読者を対象に書かれたもので児童文学ではないかもしれませんが、それにしても独りよがり(老女の戦争中の思い出も非常に類型的)な作者の思い込みで書かれていて、新しい発見がありません。
 また、作者は、この作品でも、障害を持った子どもは、父親には捨てられ母親には殺されそうになり、周囲からは理解されないという固定観念に縛られていて、新しいストーリーを生み出すことを阻害しています。
 ただし、一人暮らしの老人と阻害されている子どもの関係というのは、新しい児童文学を生み出す可能性を持った素材だと思います。

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3月28日(月)のつぶやき

2016-03-30 09:31:00 | ツイッター

「内海 健「うつ病新時代 双極?型障害という病」」 goo.gl/dkh3QP


「大野裕「こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳」」 goo.gl/CBTxEg


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大野裕「こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳」

2016-03-28 11:52:47 | 参考文献
 同じ著者の「はじめての認知療法」の記事でも紹介しましたが、うつや不安に対する療法として、薬物療法と同等以上の効果があり、薬物療法と併用することによってさらに効果が得られる「認知療法(認知行動療法)」を、医療機関やカウンセリング施設にかからずに、自分でマスターできる自習帳です。
 現在では、認知療法は日本でも広く知られるようになり、同種の本もいろいろと出版されていますが、この本はそれ以前(2003年刊行)に出版された初めての自習帳です。
 この本の各モジュール、ストレスに気づこう(ストレスチェック)、問題をはっきりさせよう(問題リスト)、バランスのよい考え方をしよう(コラム法)、問題を解決しよう(問題解決技法)、人間関係を改善しよう(アサーション)、スキーマに挑戦しよう(スキーマの改善)を順に自習してマスターできれば、読者の生活はかなり改善されます。
 特に、コラム法と問題解決技法は、「うつや不安」に悩んでいない人にも有益で、仕事、家庭生活、勉強など幅広く応用できます。
 ただし、この分野は日進月歩なので、新しい本(同じ著者ならば「はじめての認知療法」(その記事を参照してください)など)も合わせて読むことをお勧めします。
 特に、コラム法のシートは、問題解決技法と結びつけるために改善されています。

こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳
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はじめての認知療法 (講談社現代新書)
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内海 健「うつ病新時代 双極Ⅱ型障害という病」

2016-03-28 08:50:57 | 参考文献
 2006年8月に発行された新しい気分障害である双極Ⅱ型障害(軽躁状態とうつ状態が繰り返しあるいは混合して現れる障害です)について、臨床と並行して、気分障害史にも言及して解説した本です。
 ポストモダンに生きる我々がいろいろな生きづらさに直面した時に発症するのは、旧来のうつ病(メランコリー)ではなく、このポストメランコリーの病気なのです。
 まだ臨床医の多くもこの病気を正しく理解していなくて、多くの患者がうつ病と誤診されています(私自身も、2003年に同様の誤診をされた苦い経験を持っています)。
 今の子どもたちや若い世代を取り巻くいろいろな問題(いじめ、セクハラやパワハラなどのハラスメント、ネグレクト、虐待、ひきこもり、登校拒否、拒食、過食、自傷、自殺、薬物依存、犯罪など)の背景の多くに、当事者やその親や教師や上司などの内部にこの双極Ⅱ型障害が潜んでいることが多いと思われます。
 また、この障害は、個人の責任ではなく、社会のひずみが生んだ「公害」なのです。
 そのため、社会全体を改革しない限り、この障害ならびにそれに基づく問題は、マクロ的には解決できないと思っています。
 私は、これからこのような子どもたちや若い世代の問題を取り上げた創作(児童文学ではなく一般文学になると思われます)に力を入れていこうとしていますが、その背景を正しく理解するためにこの本はおおいに役立ちました。
 ただし、この本は内容や文章がやや難しく、筆者もあとがきで弁明していますが、「精神科医からのメッセージ」というシリーズ名にはふさわしくなく、「精神科医へのメッセージ」といった趣です。

うつ病新時代―双極2型障害という病 (精神科医からのメッセージ)
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勉誠出版
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3月27日(日)のつぶやき

2016-03-28 08:37:42 | ツイッター

「水間千恵「秘密のキスの行方――映画「ピーター・パン」(2003)について」」 goo.gl/UO0na


「リアルタイム・ウォッチャー」 goo.gl/Y4a3I


「最上一平・文 国松エリカ・絵「からかさにざえもん」」 goo.gl/X9MLTS


「少女小説とキャラクター小説の関係」 goo.gl/VzoSxB


「児童文学における時間の概念」 goo.gl/KsdZnU


「現代における少女小説の位置づけ」 goo.gl/0EBKXC


「過酷な現代においてユートピア童話が持つ意味」 goo.gl/1cjhMz


「池井戸潤「居眠り八角」七つの会議所収」 goo.gl/T5ixLs


「尾崎 翠「歩行」第七官界彷徨・瑠璃玉の指輪他四篇所収」 goo.gl/I31DKp


「6才のボクが、大人になるまで」 goo.gl/MlDSYP


「大野裕「はじめての認知療法」」 goo.gl/0NLqxL


「大野裕「はじめての認知療法」」 goo.gl/0NLqxL


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大野裕「はじめての認知療法」

2016-03-27 11:18:45 | 参考文献
 うつや不安などに有効な治療法(薬物療法と同等またはそれ以上に有効で、薬物療法との併用も可能)である認知療法(最近使われているこの言い方は認知症の治療法だと勘違いされるので、本来の「認知行動療法」を使う方が好ましいと思われます)を、この分野の日本における第一人者である筆者が、やさしく解説しています。
 認知療法が何かから始まって、活動記録表、問題リスト、問題解決技法、注意転換法、腹式呼吸、漸進的筋弛緩法、アサーション、コラム法、スキーマなどの、有効なツールや概念が紹介されています。
 特に、コラム法と問題解決技法は、患者だけでなく一般の人にも有効なツールなので、みにつけると確実に生活の質を改善できます。
 これらをみにつけるには、同じ筆者の「こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳」の方が使い易いでしょう。
 ただし、問題解決技法とコラム法を結びつけるために、「こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳」(2003年発行)の「七つのコラム」に対して、「はじめての認知療法」(2011年発行)の「コラム法」は、八番目のコラム(「残された課題」)が追加されていて、改善されています。

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6才のボクが、大人になるまで

2016-03-27 09:53:20 | 映画
 6才の少年が大学に入るまでを、ドキュメンタリータッチで描いています。
 主要な登場人物(主人公、姉、母、離婚した父など)を同じ俳優が演じて、12年間かけて撮影したところがこの作品の新しいアイデアでしょう。
 12年間にわたって、登場人物の成長や変化を描きつつ、その時その時のアメリカの代表的な風俗(ハリー・ポッター、野球選手のメジャー・クレメンス、スマホ、SNS、オバマブーム、DV、マリファナ、銃、アルコール依存症など)を盛り込んで時代性を表しています。
 しかし、この作品はあくまでもフィクションなのですから、それだけでは不十分です。
 物語性の弱さ、特に大人に近づいていく後半が類型的で陳腐です。
 舞台がかつて十年ぐらいの間ひんぱんに通ったテキサスなので、個人的には懐かしかったのですが、後半はかなり退屈でした。
 

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遠い空の向こうに

2016-03-27 09:49:05 | 映画
 1950年代の宇宙開発競争時代に、ソ連の人工衛星スプートニクスの成功に刺激を受けて科学に目覚め、ロケット開発に夢中になっていく少年たちを描いています。
 まさに、児童文学の王道の成長物語を絵にかいたような作品です。
 閉塞した田舎の炭坑町(そこを抜け出すには、主人公の兄のようにフットボールの奨学金を手に入れて大学に進学するしか方法がありません)、炭坑に人生のすべてをささげている父との葛藤、父の事故、科学コンテストに出場するよう励ましてくれる恩師の病気、度重なる失敗など、さまざまな障害を乗り越えて科学コンテストの全国大会で優勝して、仲間たち(ロケットボーイズと呼ばれています)と共に大学進学の奨学金を獲得します。
 実在するNASAの技術者の自伝に基づいた、典型的なアメリカンドリームのサクセスストーリーなのですが、俳優陣の堅実な演技が素直な感動を与えてくれます。
 あらゆる意味で、1950年代はアメリカの黄金時代だったのですが、2016年の大統領選挙でも争点になっているように、現代では格差問題(特に若年層)が深刻化しています。
 アメリカでは大学の学費の高さとそのための学生ローンが問題になっていますが、日本でも奨学金の名を借りた高利の学生ローンは若い世代の大きな負担になっています。
 これらの解決の消極的な行政や政治家たちに怒りを覚えます。


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ペーパームーン

2016-03-27 09:46:49 | 映画
 大恐慌後の禁酒法時代を背景にしたロードムービーです。
 母を事故で亡くした九歳の少女を、母親の知り合い(わずかだが少女の父親の可能性もある)の気のいい詐欺師が、親戚の家に送り届けるまでの珍道中が楽しいです。
 いろいろなオーソドックスな詐欺の手口が、オニール親子(実の親子です)の達者な演技(特にテータム・オニールはシャーリー・テンプル(戦前の天才子役)の再来と言われて、この映画でアカデミー助演女優賞を最年少で受賞しています)で、鮮やかに描かれています。
 ペーパームーンと言う題名は、実際には血のつながりを持たなくても一緒に過ごしていくうちに心のつながりを築いていくという意味で、少女が、裕福でやさしそうな叔母夫妻との生活よりも、根無し草のような詐欺師との暮らしを選ぶラストを暗示しています。
 子どもがたばこを吸うなど、今では許されないようなシーンもありますが、人と人のつながりを見事に描いた傑作ですし、児童文学を捜索する上でも大いに参考になります。
 それしても、天才子役たちのその後は、洋の東西を問わず悲惨なことが多く、テイタムもその例にもれません。
 そんな子役たちを、ちやほやしながら搾取する大人たちの存在は許しがたいものがあります。

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礒田道史「武士の家計簿」

2016-03-27 09:44:54 | 参考文献
 ベストセラーになり映画化もされた歴史啓蒙書です。
 この作者の優れた点は、単なる歴史の紹介ではなく、現代の様々な問題点をふまえた上で、新しい歴史上の発見を紹介していることです。
 また、古文書を平易な現代語に訳しているので、一般読者にもすごく読みやすくなっています。
 ただし、読者に分かりやすく興味も持てるように書いているので、多数の読者を獲得した反面、論文としての厳密さや現代の問題点を批判する力には限界があるように思われます。
 この葛藤は、児童文学を創作する上で、多くの読者に受けるように書くことと、創作者としてのオリジナリティを獲得することとのジレンマに共通しています。

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オデッセイ

2016-03-27 09:42:25 | 映画
 宇宙時代のロビンソン・クルーソーといった趣の作品です。
 火星に取り残された宇宙飛行士が科学的知識を使ってサバイバルしていく様子は面白いし、もちろんCGもすごいのですが、最近ののとんどの大作映画と同様にヒューマンドラマがすごく弱いです。
 火星に取り残されても、ほとんど孤独や絶望感を感じないメンタリティは、アメリカ人らしいといえばそうなのかもしれませんが、あまりにも楽観的で日本人には理解しがたいところもあります。
 また、娯楽映画なのであまりめくじらは立てたくないのですが、あまりにもご都合主義な部分(立派な避難所でディスコミュージックは好きなだけ流せるのに地球との交信設備はまったくない、宇宙飛行士がたまたま植物学者だったので火星でジャガイモを植えることができる、まったく政治的な動きが描かれていないのに中国が救出に協力する、最終的な救出方法は若い黒人が個人的に考え出す)には、苦笑を禁じえません。
 女性にも(宇宙船の船長は女性です)、ヨーロッパ人にも、黒人にも、アジア人にも配慮するのは、世界的にビジネスを展開しなければならないハリウッドの宿命なのでしょうが、あまりにも八方美人的ではないでしょうか。

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過酷な現代においてユートピア童話が持つ意味

2016-03-27 09:37:54 | 考察
 児童文学には、ユートピア童話という分野があります。
 人間関係が濃密で、地域全体で子どもたちを育んでいるような環境を、作品の舞台にするのです。
 多くは高度成長時代やそれ以前といった時代設定、あるいは農村や漁村といった舞台設定、時にはその両方を備えている場合もあります。
 そこにおいて、現代では失われがちな人間関係や豊かな人間性を持った登場人物を使って、物語を展開するのです。
 それ自体は、人間関係や人間性が失われがちな、現代の、特に都会の生活に対するアンチテーゼの働きをしているので、ユートピア童話のすべてを否定しようとは思いません。
 しかし、そういった作品が同じ作者によって繰り返し描かれることは、過酷なユートピアではない現実社会からの逃避になってしまう恐れがあります。
 また、設定自体が作品のリアリティを保証してしまうので、文学としての大きな飛躍がありません。
 現実社会の問題点も描きながらユートピア童話を書くことは、より困難なことかもしれませんが、そういった状況における人間関係や人間性の復活を描き出すことができれば、より価値のあることなのではないでしょうか。

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現代における少女小説の位置づけ

2016-03-27 09:35:17 | 考察
 他の記事でも書いたように、現在の児童文学の読者の大半は女性です。
 女性といっても、従来の読者だった子どもたちだけでなく、若い女性たちや最近では年配の女性たちも読者対象に含まれます。
 そのため、現在の児童文学の主流になっているエンターテインメント(女性向けとしては、ラブコメ、お手軽ファンタジー、ユーモア小説などがあげられます)だけでなく、50年代から90年代ぐらいまでは児童文学の主流であった「現代児童文学」(定義は他の記事を参照してください)のような純文学的作品も今でも商品として成立しています。
 そういった作品では、昔も今も、女の子たちの繊細な感覚をビビッドに描いたものが商品になりやすいようです。

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東京堂出版
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